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TOP50第3戦野尻湖報告
強烈なパターンを試合中に見つけながら、
最後まで詰め切れなかった自分の甘さが悔しい。



今季の自分にとってもう後のない分水嶺となったTOP第3戦野尻湖は、結果的に取り返しの付かない砂を噛むような悔しい結果に終わってしまった。
現実的にこの試合の敗戦で、昨シーズンに続きエリート5出場権の獲得も不可能となり今シーズンに賭けた目標は事実上、ここで潰えたと思う。ここまで応援してくれてきたファンの皆さんの期待に応えられず、慙愧の念に耐えません。

癌を克服復活しその後3シーズン連続TOP5を維持、満を持してTOP50タイトル奪還に望んだこの2シーズン、過去の自分の戦歴から見ても信じられないほどの不調が続いている。ちょっとした故障はあるとはいえ、技術的メンタル的な不調もほぼない。先日、50歳の誕生日を迎えたが、年齢によるハンディさなど全く感じてもいない。むしろ闘病復帰の頃に比べれば体調も体力も圧倒的に今の方が上だ。特に一昨年からAOY奪還を目指し練習量を増やしたプリプラクティスでは、毎試合、優勝を意識できるほどの手応えを得ることが出来ていた。
ところが、その手応えが大きい試合ほど、結果は惨憺たる予選落ち、比較的リミット達成率が高いイージーな試合にもかかわらずリミットすら揃っていない。皮肉なことに昨年、プリプラでは最悪の結果だった遠賀川戦、今期の七色戦は終わってみれば最もいい結果だった。

毎回、試合が終わった後、原因を冷静に客観的に分析反省するが、ここ2シーズンで感じることは、天候や気温水温の変動が急激で極端なことが、バスの行動パターンを極めてショートサイクルにさせている気がする。すなわちタイミングが合えば強烈なパターンが成立しやすい半面、非常にパターンが短期的に消滅してしまう傾向が強いと言うことだ。したがってプリプラ期間中に強烈なパターンを掴めても、今までの経験では10日後の試合まで、少々ピークは過ぎても十分通用すると経験的に予測しても、その予測を上回る速度で消滅してしまう。

自分のパターンフィッシングは、31年間、綿密な長期プリプラで本番にピークになる勝負パターン、本番まで残る可能性が高い安定的パターンをきっちりと煮詰め、予測を外さない読みの確実さが強さの根源にあった。
ところが、プリプラであまりに良い結果を掴むがゆえ、前日練習でプリプラのパターンがほぼ消滅しているのに気が付きながらその事実から目をそらし、「本気で釣り込めば…」と諦めきれず初日からそのパターンをしつこく試してしまい、時間を大きくロスし精神的に壊れてしまう悪循環が大きな不調の原因と考えている。自分にとって久々の野尻湖戦は特にその傾向が激しかった。その短期変化に付いていけなかった敗戦実例を、今回の野尻湖戦を振り返ることで話してみたい。


上位3名は全て虫系ルアーが占めた。本当のキモは誰も話していないが…。
野尻湖ローカルテク、恐るべし。


今回の野尻湖はプリプラの折、3つのパターンが存在した。一つは野尻湖で最も安定している船団風物詩的ディープフラットのワカサギパターン。2つ目は7月名物の虫パターン。そしてもう一つが梅雨特有のエビの接岸パターンである。そして誰の目にもバスのストック、サイズ、安定感とも最強だったのが8~10mフラットのキャロ系ワカサギパターン。しかしコレは船団で1日タコ粘り、エサ釣り感覚が必要なこの釣りは性格的に自分には無理があった。そして何故か本来はこの時期最強のはずの虫パターンは、誰もが絶不調と感じていたと言ってもいいほど良い感触がなかった。自分はこのパターンを執拗に追いかけたが、これもあと10日そこらでは始まらないのではと判断し、虫パターンの可能性は低いとプリプラ最終日を迎えた。


プラでのワカサギのボイルパターンは凄まじく、アラスク70のクイックチャンジャー装着・超遠投早巻きで良いサイズが狙えていた。
しかし、本番にはワカサギのサイズが異常に小さくなって終了。


そして、最終日にがらりとパターンを変え2キロ越えのスモールをはじめ6キロ近いスコアを出せたのが、実はアンクルゴビー改のノーシンカー「エビパターン」でのサイトフィッシングだったのである。この時のキモは「エビのなる木の根」だった。特殊な条件にあるバンクの木の根付近にのみ大量のエビがぶどうの房のように群れており(たぶん産卵?)、その木の根の前でじっと待っていると20分に一回程度、大型のスモールがフィーディングに複数匹で差してくることに気がついたのである。それをたまたまディープ用に用意していたアンクルゴビーのプロトをノーシンカーで使い、あるアクションを加えるとほぼ8割の確率でビッグスモールが喰ってきた。その特殊条件を満たすバンクの木の根を数箇所必死で見つけ出したところ、全てのスポットで同様のパターンが劇的に成立したのである。


昨年の馬淵桧原湖準優勝からヒントを得て、スモール戦のディープ用にサンプリングしていた「ゴビートライデント2.7インチ」、
これのノーシンカーは強烈に釣れた。
絶対的パターンかと思ったが…。


この時、野尻湖の水温は24度。しかし、試合直前に知ることになるが、野尻湖では梅雨明けの目安である25度を境に、エビは一気にシャローから姿を消しディープに落ちることを自分は知らなかった。水温が25度を超えてしまった本番、自分のパターンは完全に直前で完全に崩壊した。しかし、もはやディープ船団戦をやる気はなかった。「死ぬなら前のめりに倒れたい」、本戦は無理を承知でノーシンカーサイトを貫く決意をした。奇しくも馬淵も同じパターンを考えていたようだ。


今回は大きく外してしまった馬淵。
しかし、イールクローラー10インチウナジュウで3日間で最大のビッグフィッシュ賞を天才ラージを仕留めて獲得。
http://www.jbnbc.jp/


馬淵が使ったウナジュウ。もはやトーナメントビッグフィッシュベイト。


ただ、最終練習日、もしかして「虫」になったのかと投げたプロトの蝉に1300gのスモールが出てしまった。物凄くいやな予感がした瞬間だった。焦りながら虫を過去の経験からいいとされる木の前で風神スパイダーの「ポットン落とし(平置き)」や「オバハンドリフト」を試すが、フラフラとたまに出てはくるものの食う前にあっさり見切ると言う現象は変わっておらず、これはディープの圧勝かと悩みながら本戦を迎えた。


プロトの雷神シケーダーを前日プラで投げたら一発で出たビッグスモールマウス。
この時はまだ最新の釣り方には全く気がついていなかった。


そして本戦初日、全てのエビのなる木の根を130%の集中力で攻めるが壊滅。ワンバイトも獲れず11時を回った。コレはもう絶対にだめだと、ディープも数投試すがリズムが全く合わない。もうシャローで死ぬしかないと、思い切ってプロト蝉を平置きで落としまくるが、出ては来るものの全て寸出で見切られていた。
そんなある時、偶然、ミスキャストしたプロト蝉がおバーハングの木の中にズッポリと引っかかってしまった。もう気持ちも切れかけ、竿をあおりまくると、なんとその木から大量の蛾が舞いだした。今年の野尻湖は蛾の大量発生が大問題になるほど多く、唖然としてみていたのだが、その時、その舞い散らかした蛾の木の下になんと大型スモールが何匹も浮上してきて、蛾をバクバク喰い始めたのだ。
すかさずプロト蝉をそこに落とすがこれまた完全無視…。完全に見切られている。「今までの虫の使い方では見に来るだけでまず喰わない」このときそう確信した自分は、なら真逆は?とダメモトで全く違ったアプローチを仕掛け瞬間、いきなり反応が変わった。ほぼ出て来た全てのバスがプロト蝉を迷いなく咥えるようになったのだ。


今回使ったTOP50野尻湖スモールレコード(1980g)を仕留めた自作の蝉型ルアーのリメイクプロト。
ヘッドの塗装までボロボロに剥げるほどバイトの嵐だったが、今の野尻湖ではここから更に一工夫が必要だった。
高くついたが最高のヒントを得られた。


しかし、今度はここからが本当の地獄だった…。実に残り時間2時間、蛾の舞う木を目視で探しまくり、その木の下で合計20本以上のスモールがプロト蝉を咥えては水中に引き込んだにもかかわらず、9割方がスッポ抜け、何とか掛けられても実に6本近くをフッキング直後やファイト中に意味不明なバラシ。その全てが800~1300g前後のビッグスモールだけに、ボートの上で絶句し、のた打ち回り、そして時間切れと共に自分は壊れてしまった。
キャッチできたのは20数バイト中僅か3本、それでもキロオーバーを含む2500gを超えるウェイトだった。虫がヤバいと確信したのも後の祭り、帰着して上位の驚異的ウェイトと虫喰いバス独特の体色を見たとき、絶対にコレは虫しかないと確信した。


こっちの化け物虫?は本気で使ったが今回は化け物ラージには無視されてしまった。
しかし、虫との使い方に共通点アリ。


そして2日目、僅か3個のプロト蝉のみで戦うことを決意し、朝から虫一本勝負に出た。絶対ともいえる誘い方に気づいて以来、嘘のように次から次へと出てくるバス全てがルアーを咥えて水中に引き込んでいく。しかし、朝の40分で狙い通りにグッドサイズ3尾を虫で手にしながら、そこからは初日以上の地獄が待っていた。
総バイト数はゆうに30本はルアーを完全に咥えていただろう。そしてその9割をスッポ抜け、ジャンプバラシ、ファイト中のフックオフでバラし続けてしまった。最後の最後まで必死でフッキング方法を試行錯誤したが、結局、この日も朝の3本しか手に出来ることはなかった。
もし、30バイトのうち完全にフックアップしたバスだけでも獲れていたら、5キロ前後は確実だった。あまりの悔しさで精神崩壊を起こす寸前だったが、経験不足の野尻湖という極めて特殊な癖を持つ湖で、本番中に勝利が見える鍵を見つけられる力がまだ自分にはあったこと事だけは救いだった。


ディープフラットを釣らせたらTOP50でも3本の指に入る達人、前山プロ。
ディープのみで遂にTOP50初表彰台獲得、年間レースも4位に浮上。
遂に頭角を現し始めた。


蓋を明けてみると、4位の秋葉プロ、5位の前山プロは安定したディープでのアンクルゴビーキャロメインだった。知らなかったが、ゴビキャロは今密かな全国ブームらしい。そして予想通り圧倒的ウェイトの上位3人は全て「虫」だった。いったい自分との差は何だったのか…。


全然知らなかったが、今、ゴビーのキャロが何故か凄く釣れるようで、各地で大流行しているそうだ。
今回も4位、5位に貢献。


予選終了後、沢村プロと桟橋で1時間ほど話をした。最終日トップウェイトで3位入賞した沢村プロのパターンは実に恐ろしいほど自分と全く同じだった。氏は「すっごいキモがあるんだよ」と言う言葉で虫を表現したが、そのキモを自分が図星で当てたがゆえ、答えてくれた事実である。氏は表彰台に立ってもキモは言わなかったが、それには「3つのキモ」が在った。そのうち2つは自分も解っていたことだ。しかし、最後の一つが「付け焼刃」だった自分の最悪の結果となった最大の原因だった。バスの居場所を見切る方法、バスを水面まで呼ぶ方法は間違いなかった、しかしその最後の1つこそが優勝した小林プロ、福島プロ(福島は絶対にキモを言わないが恐らく近いものだと思う…)にも共通する最大のキモだったのだ。


31年来の宿敵にして永遠のライバル、沢村さん。
間違いなく日本のバスの歴史上、今も最前線に立つ最強にして最タフなプロの一人だ。


その答えは物凄くシンプルだ。それは虫ルアー改造を伴うキモだが、その改造を同じようにしたからと言って同じ結果を出せるわけでではない所に使い手の「絶対的スキル差」がある。
悔しいがそこまでは出来なかった自分に、そしてそのスキルに慣れがなかったことが、史上稀に見る悔しい、悔し過ぎる完敗の原因だと思う。

この答えは、黒帯DVDのカメラマンを乗せていた故に、ユーチューブ動画でも公開すれば80%のキモは一目で理解できるだろう。狙ったら確実にバスを水面まで誘い出し、丸見えで喰わせながら何本も何本もバラシを続け、それでも勝負し続け壊れていく自分の敗北理由を知ってもらいたい反面、敢えて何も語らず隠し続けた上位陣のプロとしての死活問題、今後の対策ルアー開発における凄まじいアドバンテージのため、この実録映像を来期以降のために封印するか公開すべきかを悩みに悩んでいる。


Show must go on. I have to find the will to carry on.


悔しくて、悲しい、事実上、シリーズの息の根が止まった第3戦だったが、逃げずに顔面骨折するほど前のめりに倒れたことで、一筋の光とギリギリのところで折れない心を掴み留めることができた。来期、チャンスがあるならば必ずこのリベンジを果たしたいともう強い気持ちだけは残せた野尻湖戦だった。どんなに地に塗れても、自分には好きでたまらないトーナメントを全力で続けるために築いてきた長年の気力と磐石のバックグラウンドがある。今は我慢の時とし、虎視眈々と捲土重来の期を待つ。

 

 

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