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最“深”最先端のスプーンビルミノー講座
本気の超長文です。興味のある人は是非、読んでください。




今回の記事はルアーニュースに3週に亘って連載した「ロングビルミノーについての新解釈」について、自分のコンセプトの要点を短縮し再構築した記事です。とても長文ですが、興味のある人は暇な時にでも読んでください。これからの季節、そして春にかけてのイメージトレーニングの役に立つかもしれません。


第一章 アンドロイドI字SP釣法とシャッドキル現象


昨年の晩秋から早春にかけて大流行した「アンドロイドのI字サスペンド釣法」だが、この釣り方の流行によって夏場のルアーと思い込まれていたビッグベイトが実は高水温よりも低水温、それも10度を切るような低水温で実は最高にその威力を発揮する事が解ってきた。ビッグベイト、特にS字系(実質はI字モーションだが)の効果は実は真夏のバックウォーターを除けば、低水温期のサスペンドミノー的な使い方で最も発揮されると思うようになった。特に11〜12月、2月末から4月上旬までは一発を狙うなら今や間違いなくサスペンシャッドを凌ぐアンドロイドI字サスペンド釣法最強シーズンだと思う。


低水温期ほどデカイバスが来る。ビッグロイドすら使うイメージはもはやフィネスベイトの領域だ。


そのシーズンの中でも、ビッグベイトI字サスペンド釣法は、いわゆる小魚がフラフラと気絶した様に漂う「シャッドキルウェザー」と呼ばれる急に冷え込んだ日や寒冷前線通過後の一番難しい状況下で効果を発揮する事が多い。その理由は、低水温期には冷血動物であるバスは水温の低下と共に体温が同様に低下し、その変化が急激である程、体温の低下による新陳代謝の低下で全ての機能がスローになってしまう事にある。これは恐らく体の動きだけでなく考える機能も、視力までも極端にスローモーション化すると思われる。
それに伴いバスも同様にスローに動く獲物にしか反応できなくなるが故、ルアーの動きもそれ以上に極スローに動くものでなければ捕食を諦める傾向になる。
ただ、大きい個体ほど、低水温での耐久力がある様で、瞬発力も一瞬だけなら保っているようでもある。そして視力も低下するのか餌やルアーの存在にも少し離れただけで気が付かなくなる事が多い。
それ故、バスもルアーの存在を自然に気が付かせられる大きく「威嚇的でない波動」を放ち、身体のダルいバスが追える気を起こす、「バス以上にゆっくりと動く一定箇所で長時間粘れる能力」、最後に無理してでも頑張って食べれば「一発超満足なデリシャスさ」がルアーには絶対に必要条件となる。
この考え方からビッグベイト、それもサスペンドのI字系がなぜ低水温期に効果的なのかが理解できると思う。バスの絶対数が激減し、生き抜いた賢い大型のバスが広範囲の縄張りを持つ事ができるようになった現在のフィールドで、小型のシャッドよりも超大型のビッグベイトをサスペンドシャッドの様に使う事が有効になってきたワケが上記の理由だ。


第二章 低水温期におけるアンドロイドの致命的欠点


ところが低水温期にはこのアンドロイドI字釣法で何度も何度も苦々しい思いをする決定的泣き所がある。それは「喰いきれないミスバイト」である。ビッグベイトの最大にして最悪の欠点、それは「ボディーバイト」である。すなわち低水温期にはバスがビッグベイトのボディーを飲み込めるほど口が開かない事があり、半開きの口でビッグベイトのボディー横を弱弱しく噛むようにバイトするシーンを幾度も眼にする事になるのだ。これでは思いっきりフッキングしてもルアーがバスの目の前から消えてしまうだけで、バスはキョトンとしているだけでフッキングには至らない。ハイシーズンならリアクションで何度も追ってくれる事もあるが、低水温期は甘くない。ワンチャンスなのだ。これは実際に昨冬、何度も目の当たりにし悔し過ぎてのた打ち回る事が度々あった。こんなバイトが実は見えないところで何度も起こっておいたとすれば…このバスを獲れる方法はないのか…そう考えるようになるのも必然だろう。


冬こそアンドロイド。しかし、悔しい冬特有のバイトが多すぎるのもまた事実。


この昨冬の経験が実はひょんなことから今回の本当のロングビルの動きに関する新解釈へと繋がって行く。
まず、ビッグベイトI字釣法の初手ではルアーはほとんど動いていない。バイブレーションもウォブリングもない。これは馬淵のビデオを見れば一目瞭然の基本にしてキモでもある。それでもバスを何処からともなく中層へ惹きつけるのは、その大きさ故の水を押し分ける力にある。特に動いていなくても頭の大きさから来る水を動かす力はアンドロイドの最大の特徴でもある。これは「大きいが故」に発生するビッグベイトにしかない得意な能力だ。小型のサスペンドプラグはこちらからバスがいるであろうピンにルアーを極力、近付ける必要がある。バスが多かった時代は、そんなピンスポットは数多くあった。しかし、バスの生息数が安定期に入り、縄張りを争う必要がなくなった今、大型の個体ほど決まったピンを持たず、より快適なエリアでの餌に付いた回遊性が強く。しかも餌の回遊層に合わせてサスペンドする傾向が強くなっている。低水温期はそのまま活性が急低下する故、小さなルアーでは的確なバスの位置が掴める地形に精通した人以外は、バスとの遭遇率(被発見率)で非常に不利になっているのが現状なのだ。
要はビッグベイト並みの大きく甘い自然な水押しを静止に近い超低速で発生するルアーが、一口で喰えるイージーシルエットであればそれは現代の夢のルアーだと言えるだろう。スースレサイズでアンドロイド並みの存在感、それは現実的には実現不可能なのだ。

そんな理屈は理解できても実現不可能に見える課題に直面しながらも、昨冬、様々な試行錯誤を繰り返していた。その開発の中で初代イーターの欠点を全て完璧にクリアして生まれたのが「イーターII斬風」だったが、このルアーの開発中、ふとしたキッカケから思わぬ方向へ自分のロングビルへの思考が飛び、遥か昔の記憶をほじくり返す事になる。自分の戦歴に幾度も印象的な勝利を残してくれた初代イーター、その開発は「余りにも有名なラリーニクソンが琵琶湖で見せた早春のレーベル・スプーンビルミノーの衝撃」からインスパイアされた名作ロングビル「ステイシー」の大活躍に刺激され始まった。


クランキング系ロングビル斬風、その爆発的な速巻きの威力は間もなくTSR7で詳細解説公開。


しかし、そのステイシーもイーターも、最初から「誤解から生まれたもう一つの真実」だったとすれば?。ひょっとすると本当の「ロングビルの真髄」は今もまだ理解されていないのではという疑問が生まれた?。ラリーが何故、レーベルのスプーンビルを使ったのか…あれほど使いにくい、ステイシーやイーターに比べ圧倒的に動かない「即ワゴン行き」となったプラグを。ビッグベイトとレーベルスプーンビルミノー、一見何の関係もなく見える二つのプラグ、そこに秘められていたもう一つの真実があるのかもしれない。


第三章 アンドロイドI字SP釣法の核心を応用する釣り方


アンドロイドとスプーンビルは実は親戚みたいなもんではないか?実は昨年の冬、特に晩秋〜厳冬季にかけてのアンドロイドI字SP釣法(以下ISP)が低水温期にも優れた結果を残す事を証明して以来、ある一つの課題に頭を悩ましていた。それは低水温期でもアンドロイドのISPにはカバーの中層一定水深に止めている時間をかければかけるほど、バスがルアーに出てくる確率は非常に高くなると言う事。そしてまだ活性が高ければギリギリ見切る寸前の逃走ワンジャークで喰わせられる事も多い。
しかし、一方で晩秋から早春、水温低下が急激な時ほど出てくるとそのままじりじりと亀級ののろさでルアーに接近し、ゆっくりと、まるでスローモーションのようにアンドロイドをハムハムするバスが増えてくる。ビッグベイトの場合、ほぼ全てが水深1m〜2m以内、視界内でのサイト勝負のため、巨大な黒い影がアンドロをハムった時(口が白く開いた時)に一瞬のショートジャークで掛けに行くのだが、これがなかなか掛からない。

この秋〜春に起こり易い急激な水温低下現象は「シャッドキル」と呼ぶ現象を引き起こし、バスだけではなく小さなベイトには致命的な影響を与える。暖かかったが故に陽気に誘われうかつにシャロー(サーモクライン上もシャローに含む)に上がっていた小魚が、ディープへ避難し遅れてフラフラのショック状態でサーモクライン付近に半死半生でボーっと漂う状態になるのだ。自分の考えではアンドロイドに出てくるシャローのスローモーションデカバスは、このシャッドキル現象で動きが極端に鈍ったハヤやオイカワ、落ちアユなどを狙っている体力に余力のある大型バスだと思う。それ故、この釣り(ISP)では、喰う方も喰われる方も全てが「スローモーション」で、如何に自然にバスに「発見させ」、「体力を使わず喰える餌」を演出するかに鍵がある。
ここでISP釣法の核心となるのが、ルアーをバスの目の前に不自然に持って行くのではなく、バスが自分で見つけたと錯覚させる位置で発見させる事なのである。


アンドロイドのISP釣法はサイトフィッシングのアプローチに極めて似ている。
サイトの上手いアングラーはビッグベイトも得意だ。


バスは自分で見つけたからこそ、自分の意思で喰う目的で近づいてくるのだ。故に遥か遠方でも、ほぼ静止に近い状態でも、ビッグベイトの大きさ故に発生する波動、水の僅かな動きにバスは反応する。相手に見つからないよ言うに見つけたい捕食者の心理を利用する事がもっとも重要なアプローチなのだ。
すなわち、もしここでアンドロイドの様なビッグベイトではなく、喰い易い細身でそこそこ旨そうなミノーシルエットであれば、バスは躊躇なく喰うかもしれないし、何より細身で小さければ口の中にはいるためフッキング率は各段に上がる可能性が高い。
しかしルアーが小さければ小さい程、「遠くからバスに見つけさせる」、すなわち「バスが自ら見つけたと錯覚させる安全距離にアプローチする」事は只でさえ難しいのに低水温でバスがサイト出来ない状況では至難の業、まさに相反する矛盾となる。この矛盾を解決するには、アンドロイド並みの存在感を発揮する「波動」を持つ小さなルアー、すなわち小さくてもアンドロの様な大きくスローで甘い波動を発生するルアーが必要になる。これはバスの目の前にルアーを持って行ける場合を除き、小さくて「激しい」や「喧しい」波動はNG、何故ならシャッドキルで死にかけたハヤやオイカワは決して活きのいい波動は出してはいないからだ。


第四章 名作ステイシーと伝説スプーンビルミノー、実は全く別物?


この辺で、20年程度のキャリアを持つコアなアングラーなら、なぜ今更大昔のスプーンビルに自分が興味を持ったかピンと来たはずだ。イーターやステイシー、リバイアサンがスプーンビル系ではなく、クランク系からの進化した日本独自のスタイルなのかもしれない。無論、スースレやシャッド系もスプーンビルとは決定的に違うのではないか。
その決定的な差とは、今から25年前の初期スプーンビル(もうほぼ入手不能)を動かしてみれば理解できる。その動きはまるでバド、昔のタイガー、リップレスの頭部斜めカットが特徴のACプラグを彷彿させるほど大きくノタノタとした動きなのだ。しかし、この手のルアーのウォブリングはスローであるほど大きく動く特徴があり、超スローでも一回一回の振動が数えられるほど大きく、且つソフトな震動である。そして大きな動きなのに引き感が意外に軽いのである。


日本のバスフィッシングの歴史に最も大きな衝撃を与えたラリーニクソン。
今もその伝説は語り草である。


25年前、当時ダイワチームで撮影に立ちあった藤木に聞いた所、ラリーが使ったスプーンビルはまだサスペンドモデルがなく、実はほとんどスローフローティングに近いものだった。彼がそれをどうチューニングしていたかどうかは今では謎だが、当時はそのスプーンビルが全身空洞構造だったため、中に鉛の極小ガン玉を穴をあけて入れてサスペンドに近い状態にして使うのが大流行した(これを最初にやったのが藤木と記憶している)。
幸か不幸かこの意図せぬ偶然のチューンは、「ポンプリトリーブ」では内部の細かなガン玉がダイブと共に11mmのボディー先端に一点集中し、浮上時には全域に分散し動くことによって、スプーンビル本来の動きをさらに大きくヨタヨタした動きにしていた。
ラリー帰国後、半年ほどでサスペンドタイプもすぐに発売されたが、既に記憶は曖昧だが動きは細かく控えめになっていた覚えがある。
一方、今の様に腹部底面に鉛を貼ってチューンする事もあったが、重心位置が一点で低重心化され固定されるため、動きは全く違う今でいう普通のロングビル系に変化し、スプーンビル本来の動きとはまた違ったものになった。どちらも当時は釣れたのだが、藤木作のラトリンスプーンビルは、何故かド中層(名鉄漁礁の上や取水塔中層等)で意味不明に釣れた記憶がある。当時はラトル効果と思っていた。
しかし、その後、日本人にはキビキビとロールしながら小魚然と動く後者の方がウケたの事が、もう一つのクランキング系ロングビル誕生への布石になった様に思う。
日本人はスプーンビルのオモチャの様な不自然な動きよりも、キビキビと動き、如何にも小魚然とした明滅のある高速ロール、如何にも小魚然としたリアルな動きを好んだのである。この傾向は今もなお、アメリカンルアーとジャパンルアーの決定的な差となっている。

ここまでの流れは、現在日本でロングビルとして定着しているミノー型プラグの性格は、実はクランクベイトの延長線上にあるもので、本質的なロングビルとは実はクランクの流れよりもS字系ビッグベイトの能力の方が近い性質の別モノではないかというのが、昨年冬に再考し始めた自論である。もう少し身近な感じで言うなら、現在の日本のロングビルはクランクベイトの親戚とも言えるシャッド系の親族で、自分が今期非常に注目している「純」スプーンビル(敢えてロングビルと区別している)とは「ビッグミノー」の従兄弟的性格が色濃いものではないか?と言う事なのだ。


第五章 日本的ロングビルとUS的スプーンビルのコンセプトの違い


そこでイーターIIIの開発に当たり注目したのが大昔にラリーが日本に歴史に残る衝撃を残したスプーンビルミノーなのだが、ラリーさんに直接メールで聞く事も可能なのだが、たぶん25年以上前の話をラリーさんが覚えているのか結構疑問なうえ、毎年この時期からディアハンターになるラリーさんは山にこもって通信不能になる事が多いのでここからはあくまで自分の持論である。

さて、ではクランク型ロングビルと、自分が注目するスプーンビルの決定的違いが、先週書いた「動きの違い」に関係する「誘い方の違い」にある。すなわち現在のロングビルは基本的に何かに当てること、接触する事を前提におり、コレはダイビング型クランクベイトに共通する。止めて喰わす前提は同じだが、止めるポイントがウィードや岩に接触した時や、ブレイクやリップラップにタッチした瞬間に止める事が中心である。すなわち何かを狙ってそこをキッチリ真っ直ぐ通すことが前提のルアーだ。これは言い換えればバスに極力近づける事、スポット直撃が基本である。実際、この使い方がクランクにしてもロングビルにしてもシャッドにしても一番簡単でよく釣れる「直球的」使い方だ。


イーターIIとは全く真逆のコンセプトとなるイーターIII。
必然的に形も内部も全く違ってくる。デッドスローでも極めて大きくゆったり、しっかり動く。


一方で、自分が「スプーンビル」と呼ぶ新プラグの動きは、基本的に接触を必要としない。すなわち完全な中層でもバスが喰ってくる、言い換えれば何もない中層でもバス自らルアーに近づいてくる動きに相当する。この手の動き(能力とも言える)を備えたルアーの代表がジャーキングで使うミノー、千鳥の優れたチャターベイト、そして自分が一番注目したS字系ビッグベイト(現実はI字系だが)である。飛躍すればバドやワドバギもその能力を持つ。すなわち、バスが居そうな場所をあらかじめ仮定し正確に通すルアーと言うよりは、何処にいるか解らないバスを広範囲から引っ張り出せる力を持つ動きなのだ。
ここで既に気が付いた人もいるかもしれないが、ミノーやチャターは比較的速い動きで引きだすルアーに対し、アンドロやワドバギは最低速を活かしてバスを呼び出すルアーと言える。ワドバギは水面オンリーなので低水温期にはさすがに厳しいが、アンドロはサスペンドさせる事で6〜14度の低水温期に抜群の威力を発揮する事が昨年以来証明されている。


第六章 もう一つの水面、偽装舞台「サーモクライン」。


そしてワドバギは水面の銀幕が演出を担う舞台だが、アンドロも実は「もう一つの水面」こそが演出の舞台なのである。そのもう一つの水面こそが「サーモクライン」と呼ばれる水温の変わり目だ。すなわち太陽光が差しこみいち早く温まる水深1〜2m層(透明度により変化する)と、温まり難くい底水温層の境で、11月末~4月頃のバスはこの暖かくそして透明度の境目となるサーモクライン上にサスペンドしたがる傾向が極めて強い。それが瞼の無いバスがギリギリ太陽光線から身を隠せる安全かつ、暖かい場所であり、ここが「晩秋〜早春4月の水面」と呼べる今流行り?の「偽装舞台」なのだ。
そしてこのもう一つの水面でワドバギやアンドロ以上にオートマティックにその層を広く長くキープでき、サーモクライン上の広範囲から「CALLING(呼び出す)」する力を持たせたルアーこそがスプーンビルの本質だと考えている。


イメージ的にはワドバギをサーモクラインの上でゆっくりと引いている感じ。
浮力のないサスペンドプラグを大きくゆっくり動かすのは極めて難しい。


そして、このCALLING能力には絶対的キモは2つある。1つ目はアンドロ、ワドバギ同様「大きく水を動かす動き」、そして2つ目が「水平にルアーが移動かつ静止できる事」である。
1つ目のキモは備わっているプラグも多いが、これが「超スローでも」と条件が付くと意外に存在しない。確かに激しいウォブルロールを伴うクランキング系プラグを超ゆっくり引けばいいのではと思うかもしれない。実際、激しい高速ピッチのプラグは超スローに引いてもキッチリ動いてはくれる。しかし、激しく細かいがゆえに一発一発の水の撹拌は極めて小さいのだ。これはスローになればスローになる程、パワーは無くなる。高速ピッチのルアーは高速でこそ、その激しい撹拌力が発揮されるが、超低速では1回の振幅が細かすぎてバスを呼ぶ力が発揮されないのだ。ワドバギやアンドロ、ビッグミノーの動きを思い浮かべれば、超スローでこそ、大きな一回一回の振幅撹拌パワーが重要な事はすぐに解るはずだ。
そして、2つ目の「水平かつ静止」が実は大きなキモになる。シャロークランクならばこの「水平移動」はなんとか維持できるが、ダイビング系プラグはどうしても「逆放物線」を描き曲線で潜り続ける性能がウリだ。すなわち同一レンジにルアーを長くとどめておくのは最も苦手なプラグなのだ。


最終章 ポンプリトリーブは横捌きではなく縦捌きが鉄則


「何故、ポンプリトリーブは縦捌きなのか?」、その回答がもう解った人も多いはずだ。
そう、縦捌きのポンプリトリーブとは「潜るルアーを可能な限り潜らせず、サーモクラインと水平に移動させるロッドワーク」なのである。日本主流の「ロッドの横捌き」ではロングビルはクランクベイトの様に描き潜り続け、最大水深に到達後、逆放物線を描くように浮上する。これは狙った水深のピンを直撃させるクランキングに類似する。
ポンプリトリーブとはまさにサーモクラインを水面に見立てたトップウォーター特有の誘いに極めて類似するテクニックなのである。スプーンビルのキモとはクランクベイトのキモとは違い、「見えないトップウォター」をイメージして水平レンジで使いこなす事である。


時期的にポンプリトリーブの威力を発揮できる取材ではなかったが、自分のイメージ通りのプラグになってきた。
小さくても価値のある1尾。


日本で横捌きが主流になった理由はもう一つある。それはクランキングタイプのロングビルの特徴として小魚ライクなビビットで激しいウォブンロールアクションが主流になったが、これらのプラグはロッドジャークと共に一気に水を掴み激しく震動するためロッドにグッと掛かる抵抗が大きい。すなわち、手首のスナップだけでロッドを上下するポンプリトリーブを1日繰り返すには引き抵抗が重すぎたのだ。逆に体を捩る動きの横捌きは抵抗が大きいルアーでも楽に1日ジャークできたのだ。
一方、25年前のスプーンビルミノーはポンプリトリーブ時の抵抗が頼りない程軽かった。しかし、一発一発の震動は口に出して数えられるほど大きく、甘く、軽快でもあった。これを「あまり動かないルアー」「魚っぽい動きではない不自然な動き」と思い込んでしまったのが全ての誤解の始まりだったのかもしれない。

バスの活性が極端にスローになった低水温期に、動作のスローなポンプリトリーブで、ノタノタとゆっくり動くスローなルアーを使う。全てがノロノロとした低水温期には、人の操作もルアーの動きも、全てを低水温特有の生命活動に合わせてやる事が肝心なのだ。
無論、水温が「安定して10度以上」ある場合はむしろクランキング系のイーターII斬風タイプの速巻きがポンプリトリーブより効果的だし、狙ってピンを通すならこちらの方が効率はいい事も多い。
しかし、水温10度前後、それ以下の世界では未だポンプリトリーブ「真の封印」は解かれてはいない様に思う。そして、その使い所の判断力こそがアングラーの「真のスキル」である事は言うまでもない。
(完)



 

 

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