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2011年新艇レンジャーZ519インプレッション
開幕戦での登板は震災に配慮し見送られたレンジャーZ519。
デビューは第2戦旭川ダムになりそうだ。



久しぶりにのんびりと過ごしているGW。今回は少し話題を変えて、今季からトーナメントに導入する最新型のレンジャーZ519のインプレッションを書いてみよう。

開幕戦では震災被害に配慮し60馬力までの馬力制限が設けられたため、急遽取材用のクイントレックスを登板させたが、今季の主力艇はレンジャーボートジャパン(ポパイカンパニー)とマーキュリー(キサカ)のサポートによりRanger Z519& Mercury ProXS225TorqueMasterに乗り換える事になった。

完全に競技専用仕様に仕上げた今回のZ519。
取り回しの良さと機動性は格段に向上した。

これは昨年まで乗っていたZ21・マーキュリー250ベラードが、間もなく完成する「伝説の黒船」完全復活計画に伴い、琵琶湖で小南ガイドのガイド専用艇として第一線を勇退、代わりにより実戦戦闘能力と搬送利便性の高い中型艇(19Ft)であるZ519がトーナメント主力艇として導入される形となった。
今回のZ519は従来の519VX(19フィート)が搭載上限200馬力マックスだったのに対し、環境適応型2サイクル・オプティマックス225馬力が搭載可能になった。その効果で動力性能、特に加速と高速時の伸びに関しては旧519シリーズに比べても破格に向上している。また、今回のProXS225にはレーシング仕様のオプションであるトルクマスターを装備したため、高速コーナリング、ハンドリングに一層のキレが出ている。プロップは現在FURYを使用しているが、最終セッティングはピッチ24~27で試走し決定する。

環境対策エンジンとは言え、そのパンチ力は健在。
スーパーチャージャー搭載の4サイクル、「ベラード」も良いが、官能的なのはやはり2サイクルエンジン。

心臓部に関して特筆すべきは、ProXS225/TMエンジンはオフィシャルチューニングファクトリーであるMercury Racing製エンジン程ではないものの、ホモロゲに近い設定で、リードバルブの変更等、加速、最高速共にややレーシングよりの味付けがなされた。一方でかなりの実績期間を積んだ排気ガス規制環境対策型のため、初期モデルやレーシング系にありがちなハズレが少ないのも特徴で、非常に燃費効率も良く、サメウラ湖程度の広さなら全開を控えれば5日間連続無補給(200L前後)で済ます事が出来る優秀なエンジンである。


慣らしのため7割程度に抑えてもこの浮き姿勢。ローリングは全くない。


現在の所、まだ慣らし走行の段階でありZ519の本性は完全には把握しきれていないが、Z系に比べZ5系は重厚なハルと厚みのあるボディーを持ち、ラフウォーターでの走破性、耐衝撃性に優れた感じを受ける。かつてのレンジャーVX系から考えれば耐衝撃、走破性能に関しては19フィートでは最も安心感があるかもしれない。その分、平水域での高速性、静止性能、デッキの広さ等はZ21系にやや歩があると言える。

水上のメルセデス、Z21ベラードでのラフライドは正直、相当な慣れとテクニックが必要。
スーパーチャージャー搭載の4サイクルは今までと全く感覚が違う。
ラフライドはやはり2サイクル。

自分が乗った感想では以前、Z21はその比類ない細部の作り込みの良さと耐久性、安全性から、バスボートの「メルセデスSクラス」と評したが、その表現は極めて的確だったと思う。一方で新型Z519はポルシェに例えたが、こちらはラフると暴力的加速性能と無敵の直進走破力を見せる伝説の黒船「CHAMPION221 Mercury300X Racing /Speed Master」(フィーリング的には911turboのGT2か)にこそ相応しい例えかもしれない。そのシルエットもまさに湖面を滑空する巨大なBlack Birdだ。

ラフライドの帝王、黒船こと旧型チャンピオン。
マーキュリーレーシング300馬力を2台乗り継いだが、一度も焼きつかせる事はなかった。
ちなみに狩野さんは馬900頭相当を焼き殺したそうで、それほどデリケートなエンジンである。

ならばZ519は車に例えれば何か。レンジャーボートがバスボート界のメルセデスと呼ぶに相応しいクオリティーと信頼、伝統を持つ事に異存はないだろう。だとすればRanger Z519は誰にも取り回しが良く、安全性、操作性が高く、一見、小ぶりで大人しそうに見えるため、メルセデスで言えばまさにミドルサイズのEクラスに相当するように思う。しかし、Sクラスの下ではあるが、今回、MercuryProXs225/TMを搭載し攻撃的な牙を隠し持った事によって、Eクラスの中でも特殊なAMG的な存在になったと言えるだろう。

Z21の前に乗っていた519VX200PSも非常に良い船だった。
マックススピードは約115キロ。
乗り心地はいたって硬い。

懐かしの518VXレイクXは、18.5フィートに200馬力搭載のため走りは良かった。
ただ琵琶湖の大浦まで走るには天候と要相談。
このころのオプティマックスには泣かされた。

現時点で正確なGPS測定はまだだが、このZ519はベストセッティングが出れば最高速度で120キロ前後をクリアする可能性は高い。以前、知り合いのレーサーが言っていたが、水上の100kmはサーキットの300km以上の体感速度で、グリップが常に不安定なため非常に怖いと感じるそうだ。まあ、グリップもブレーキも、シートベルトさえない訳で、全身剥き出しだから当然なのだが、近年、レンジャーのシートポジションが年々高くなっているのは高速走行時に少し怖さを感じる事がある。この点においても旧型チャンピオンはスタイリッシュではないが、抜群のシートホールディング性能を持っている。20数年、20台近いバスボートを乗り継いできたが、今でも、黒船世代(90年代前半)以前のDeep V ハルを持つチャンピオンこそが実戦走破性能史上最強のバスボートと言う確信は変わってはいない。


ベストなセッティングが出れば、まさに火を吹く龍さながらルースターテールは低く長く密度の濃い水炎となる。
Z519の走りはかなり期待できそうだ。


まあ現実にはスピード制限のある試合でそんな速さが必要なわけではないが、子供の頃、スーパーカーに憧れたのと同様、バスボートのトップスピードには何故か皆大人げなく熱くなってしまうものなのだ。バスボートの限界を知りたいがために腰椎間板が完全に潰れてしまうまで激荒れの琵琶湖を走り倒し、かつて狂走三馬鹿トリオ(Y積氏、私、藤木)と呼ばれた頃が懐かしい。私にとってバスボートとは、バス釣りと切っても切れない縁であり、他の釣りにはないバス釣りの象徴、トーナメントプロになった最大の動機でもある。そしてバス釣りと同じ位、バスボートに乗る事が大好きなのである。

3年前から使用しているパワーポールは今回ツイン式に。
1本だとかなりクルクル回って困ったが、流れの中でも明らかにボートの固定性能がアップした。

間もなく、伝説の黒船「CHAMPION221DCX」がフルレストアを完了し、新しい最強の心臓を得て完全復活する。
最高の腕を持つ職人さんhttp://watergear.blog.fc2.com/page-1.htmlに頼み、新艇を買った方が安くついたのではないかと言う程、約半年を掛けて手を入れてもらった。私にとってこの黒船は何年たっても、手放せない特別な存在である。2011年、完全復活を遂げた黒船伝説が新たに始動する。


茨城県で被災してしまったレストア中の黒船だったが、幸運にも全く無傷だった。
5月にいよいよ完全復活を遂げる。

新しい強心臓、Mercury Racing ProXS300SpeedMasterを搭載するためにトランサムとハルを全面強化。
今後は霞水系専用艇となる予定だ。

 

 

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