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「奇蹟のチャターベイト」、その真実と現実の巻
本戦2日目、決勝は100%モグラチャターでのウェイイン。
特に減水が安定した2日目はモグラチャターだけで20本近くのキロフィッシュを手にした。



では、「奇蹟のチャターベイト」とは、何が違うのだろう。これは私の個人的見解だが、その答えは良くも悪くも、アメリカ製ならではのいい加減さにあったように思う。実際にアメリカで勝ちまくったプロアングラーは間違いなくこの「才能差」に気が付いていたに違いない。今はそれを強く確信している。裏を返せば、その「才能」が備わっている量産品は「希少」であり、もっと穿って考えれば、量産品はわざとその「才能」を微妙に外して販売したのではないかとすら真剣に疑いたくなるほど個体差が激しい。一見、全く同じように見えても、全く別物。事実、バドのヒートンチューンのセッティングは私自身でも完璧に同一の再現は極めて難しく、その理屈とセッティングは現場で実際に泳がせて毎回調整を必要とする極めて微妙なものだった。正直、何故同じに見えるルアーがこうも動きに違いが出るのか不可解で仕方がなかった。
しかし、その「才能差」をいちばん身近で見て、知っていた渡辺は、早明浦戦後の四国プロシリーズでバドオンリーで3勝を記録し、四国最強と呼ばれていたのも事実だ。アメリカンルアーにはしばしばこういった奇蹟的事件が起こるが、その偶然の「才能差」をこの奇蹟のモグラチャターは私に気づかせてくれたのである。それは本当に偶然の出会いの産物だった。

懐かしの早明浦戦ウィニングバド。
直前プラで20個近く作って、結局、使えたのはこの2つを含め僅かに3個。
見た目は同じ量産品なのに、どう言う訳か個体個体で微調整が必要だった。これも初めから備わった「才能差」?

もうここまで書いたら、解っていると思うが、ぶっちゃけ一番重要なのはズバリ「千鳥アクション」である。しかし、「千鳥アクション」をチャターで出す事はさほど難しい事ではないし、3年前にも散々メディアでこの事は紹介されている。そんなことを今更奇蹟と言うつもりはサラサラない。第一、今回の旧吉野川戦は先の旭川の阿部信吾トップウェイトの影響、直近のTSR記事の影響もあってか、結局、蓋を開けて切れば5〜6割のプロが何かしらチャターベイト風のルアーを作って投入していた。情報に敏感なTOP50プロの間では解り切った事実だ。

ぶっちゃけ最大の才能差は「チドリ」具合。
チドリはチドリでも、バスの癇に障るチドリと、バスが気にしないチドリが確実に存在する。
チャターに関してバスは喰い気で喰いに来ているのではない(断言!)。

それでも結果的に大きな差がついた事実と、最も重要なのは3日間、ウェイインしたバスをほぼこれだけで釣り続けたという事実なのだ。私が確信を持って言える事は「千鳥ればいいってもんじゃない」と言う重大な事実である。確かにどんなチャターでも普通の状況なら釣れない事はないのだが、とにかく才能をフルに発揮させたチャターはハンパない凶暴性を発揮する。これは本当にバドの時と全く同じなのだ。水中でそれをやってのけた分、その凶暴性、永続性はバドの比ではないかもしれない。

旧吉野川では徹底して渡辺とチャター比べをしてみたが、
A級にはことごとくこのサイズが連打で喰ってくる。
ダメチャターにすると全くバイトすらなくなる事がしばしばだった。

この絶妙な違いに気がついたからこそ「奇蹟のモグラチャター」にこれほどまで没頭してしまったのだ。実際に奇蹟のモグラチャターは才能のあるブレードと特殊アイ、そしてモグラジグ&ジャバシャッドを使えば再現可能だが、その中でも確実に優劣が不思議と生まれる。なぜそうなるのか、どうしたら均一化できるのか、必死に探ってみたが今も謎だらけなのである。今回の試合でも約40個作って行き、本番投入したのはその中のA級、僅かに4つ。しかしこの4つの破壊力はケタ違いだった。

A級(奇蹟の)モグラチャターの威力は凄まじかった。
この時は帰着間際で、周りには5艇ほどの船がひしめいていたが、全くお構いなしに表層で喰ってきた。

とにかくそれは、実際にフィールドで動きを見ながら微調整しなければ本当のベストは出せないのである。本当に見た目はほぼ全く同じにしか見えないのだ。ただ、最初から「才能のないブレード」や、基本的な構造が理解できていないモノは、どんなに頑張っていじっても、ゴミにしかならない事もまた事実だった。

では、私が個人的に妄信している、この奇蹟のモグラチャターが生まれる条件を書いておこう。

(1)、ジグはモグラジグでなければならない。宣伝販売口上ではなく、本当にこれがダントツに良い。今まで気がつかなかった自分の思い込みが情けない…。まさにブレードとヘッド形状、フックバランスの偶然合致としか言いようがない。ZINXやその他のスピナーベイト、エコ系バズベイトのヘッドでも作ってみたが、ただの「バイブレーションジグ」になってしまった。見かけでものを判断してはいけないいい見本になった。

ありとあらゆるエコヘッドを利用してチャターを作ってみたが、結局、モグラチャターの足元にも及ばなかった。
このZINXチャターは一見、最高の出来栄えで、猛烈に期待したのだが少なくとも旧吉野川ではモグラの前に全く歯が立たず・・・。
ルアーは見た目ではない事を痛感させられた。

(2)、ブレード基本形状は普通のチャターブレードに近い自作改造ブレード。当初はオリジナルチャターの市販品を流用していたが、その中でも特異な「才能」を持つブレードが存在し、それは3年前のブーム時に大量購入したオリジナルの中に数個存在した。しかしこれらは、非常に初期のモデルがほとんどで、ぱっと見の外見ではほぼ見分けがつかない。最近もチャターを買いあさったが、その才能を持つものはほとんど発見できなかった。そしてフージーに頼んでこの才能を持つブレードから数種の自作ブレードと独自のアイパーツを制作し、「MOTH(モス)BLADE」と名付けた。MOTHとは「蛾」の意味である。この名前には深い意味がある。

モス・チャターの意味のヒントは、「蛾、蝶、蜂」。
自分の部屋に突然入ってきたら貴方はどうする???

(3)、ブレードとモグラの接続セッティングにも絶対的な条件が存在する。直結以外は論外。ここのセッティングパーツの形状次第でタダのバイブレーションするジグか、奇蹟のモグラチャターになるが、「才能」のあるブレードの存在が不可欠。

全てメーカーは同じ元祖チャターベイトのブレード。
しかし、形状はもとより厚み、穴位置、反り、メッキに結構なバラツキがあり、おまけにスナップ、刻印の種類も位置も多種多様。刻印なしもある。どれが才能のあるブレードかは買って試さなければ見た目では判別不能。
しかし、明らかに「天才的才能」を持つブレードは存在する。

(4)、トレーラーはピンテールでなければならない。シャッドテールやハドルテールを付けたモノは、シャッドテール、ハドルテール自体の能力の延長であり、更によけいな抵抗が加わることで奇蹟のチャターが持つ「動き」とは全く別物になる。これも本当に偶然だが、ジャバシャッドISプラスを一部チューンして組み合わせることで、チャター能力をマックスまで高められる。しかし基本的にジャバシャッドは偶然ハマった優秀なバランサー的役割で、主役ではない。

上が旧吉野川で非常によかったグリーンバックアーカンソーシャイナー。
下は高梁川で最高に効いた私個人特注オーダーのシルバーシャッド(未発売)。

(5)、奇蹟のチャターはスイムベイト系、スコーンジグ系ではない。一番近いのはシャロークランクと考えている。実態のはっきりしない毛むくじゃらの千鳥シャロークランクと言うか…。それ故に敢えて私はこのチャターモグラを「ハードベイト」に分類している。そして基本的に目で動きを見ながら操作するケースが70%を超え、バイトも50%以上の確率で目視できる。

実は今回の初日前半は急減水で大苦戦、ピンチを救ってくれたのはアリウープ&ジャバシャッドジグヘッドだった。
浮足立ちかけた時にキロフィッシュ、800gをプレゼントしてくれ、その後のチャター攻めへの勇気をくれた。

現在、言葉で明かせる事実はこれだけだが、正直言って、本音はまさか本当に驚異的プレッシャーのTOP50の試合で、しかもウルトラメジャーな旧吉野川で、おまけにピーカン灼熱の真っただ中3日連続、奇蹟のモグラチャターで釣り続ける事が出来るかは不安だった。しかし、今はその「才能」は確信となった。いまも本流筋沖合のヒョロウィードの横をチャターが通過した瞬間、白い腹をグネリと見せながら、もんどり打ってすっ飛んでくるビッグバスの姿が目に焼き付いて離れない。

この緊張感の中で、自分の力量と度胸、そしてルアーの本当のポテンシャルを正当に試せる機会はなかなかない。
だからこそやはりトーナメントは苦しいが、楽しい。

今回の試合は3日間、TSR密着取材として記者同船だったので、その模様の一部始終は今月末のバスワールドTSR巻頭カラー14ページで見て欲しい。また、来月末には驚異の釣れっぷり、「高梁川奇蹟のモグラチャター誕生の瞬間」秘蔵映像がどこかで存分に見られると思うので楽しみにしておいてほしい。

(自分にとって)幸か不幸か、10月末にはルアマガモバイル&バスワールドで奇蹟のモグラチャターの全貌動画公開。
お楽しみに!!
もう少し内緒にしたかった・・・。

ライトリグに代表されるワームフィッシングは、ルアーが「動く」と言うよりは、アングラーの操作によって生命を与えられるため、その動きは使い手次第で千差万別の動きとなる。極端な話、動かさなくても餌と間違えて勝手に釣れる事もある。一方、ハードベイトの動きは単純で、誰が動かしても基本的に同じように動いてくれる。その差があまり出ないがゆえに、簡単そうに見えて実は極める事が至難の世界なのだ。「巻き倒せばいい」「巻き続ける事が大事」と思っているうちは見えてこない世界がある。「一見、同じでも実は全然違う」これこそが、繊細で奥の深い本物のハードベイトの核心、餌とは似ても似つかぬもので釣る楽しさ、ルアーフィッシングの原点なのである。それを理解した時、今でもハードベイトだけでTOP50の試合で圧勝できる可能性は確実にあると信じている。


悔しい3位だったが、ハードベイトの無限の可能性を実感できた価値ある試合でもあった。
残すは最終戦檜原湖。年間5位以内を目標にそろそろ本気で優勝を狙っていきたいと思う。エリート選出投票も最終戦で締切、何とぞよろしくお願いします。

 

 

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