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TOP50第3試合詳細報告、そして再起動へ。
どんなに努力しようとも、どんなに願おうとも、バスは人の都合など聞いてはくれない。
これが釣りと言う競技の非情な真実なのだ。だからこそ、求める道に終着はない。



2013年トップ50折り返しとなる第3戦霞ヶ浦が閉幕した。結果は開幕戦の悪夢を彷彿させる最悪の34位。年間ランキングは30位に落ち、TOP50チャンピン獲得の可能性、そして今季のエリート5出場も事実上ここで完全に潰えた。この3年、年間ランキングトップ5を辛うじて確保してきたが、その上を強く意識し過ぎたが故のオーバーワーク、緊張、疲労の蓄積がここにきて遂に裏目へと出た気がする。
あれから一週間、気持ちを前向きに切り替えるために、何も考えず休息の時間を取り、ようやく再起動に必要な充電が完了した。今は逆に何か少し解放されたような安堵感すら感じている。正直なところ凹んでいないと言えば嘘になるが、今の心境はこの試合のレポートの最後に記しておいたので興味があれば読んで見て欲しい。

ここからの文章は先週号ルアーニュースに掲載した負け試合の詳細レポートである。表彰台に乗れなかった敗者には何も語る資格はないし、その話に価値もないかもしれない。しかし、その結果の裏には必死にもがき苦しんだそれぞれのドラマがある事も知って欲しい。


初日荒天による中止。
荒れる湖面を見ながら、馬淵が「テンションが切れてしまう・・・」と呟いたが、自分もそうだったのかもしれない。


開幕戦同様、プリプラクティスに万全の自信を持って臨んだ今試合、開幕戦の二の舞を何処か恐れる気持ちはあったが、それを踏まえての戦略を十分にとっていたつもりだったが、何の因果か自分の予想を完全に裏切る最低最悪の結果となってしまった。開幕戦も今回も、天候の急変、痛恨のミスフィッシュはあったが、それは毎試合織り込み済みのでき事であり主たる原因とは考えられない。
自分の戦歴データ上、例え2週間前の練習であれ、確固たる手応えを得た時には高確率で表彰台に絡む可能性が高く、その有言実行力が身上だった。
しかし、3戦を経て最も練習時に手応えの無かった遠賀川戦が7位、優勝を強く意識できる程手応えのあった開幕と第3戦を共に致命的な結果になった事は、正直自分でもその原因の追及と修正に目途が付いていないのが現状である。
強いて原因の一つを挙げるならば、今年は特に顕著になってきた異常気象、天候不良による季節感の大きなズレによって、2週間と言うタイムラグが自分の予想以上に極端に変化している気がする。特に今試合は練習時にはウィンドブレーカーを着こまないと日中でも寒い程の涼しい気候であったにもかかわらず、オフリミット時には34度を超える猛暑に急変、水温も30度越えを記録していた。
これは梅雨明けを見越した完全に予想範囲内の出来事で問題はなかったのだが、それを遥かに上回る想定外の気象変化が本番では起こった。公式練習時は気温は30°を遥かに超えたが、試合本番初日にはこの時期としては極めて珍しい冷たい北の強風が朝から吹き荒れ、想定外の初日中止が決まった。そして2日間のみの試合となった事もイレギュラーだったが、それ以上に試合2日間がずっと季節外れの冷たく強い北東風になった事が全てを狂わせてしまった。湖上は関西では想像も出来ないほど、まるで秋の様に寒く、水温はなんと24度まで低下していた。


既に25日発売のルアマガで詳細を書いているが、バギーの裏技としてモグチャ表層直下巻が実はアツかった。
水面系巻き物に高い可能性を感じながら、まず手堅さのテキサスリグに拘ったのが失敗だった。


今試合練習では夏場のメインである南東風を予測し、その風の角度によって発生する潮目ができる北浦西岸の岬裏のスポット、そして勝負エリアとして霞本湖の潮目ができる部分に当たる浚渫にエリアを絞り、同時に最も厳しくなるであろう真夏の無風ベタ対策に最も力を入れていた。
霞ヶ浦ではこの風を読んで発生する流れでバスの居場所がコロコロと変わるのが最大の特徴で、プリプラでの練習はもっぱら場所探しではなく、風の場所当て(潮目がかかるスポット)とシルトが巻き上がる底荒れまでのタイミング(シルトが巻き上がってしまうとナマズ王国になる。)を全域に亘ってランガンで当てていく練習を繰り返していた。
練習時にはこのタイミングの測り方は優勝を意識するだけの高確率で当てる事ができていた。過去のTOP50霞北浦戦で幾度も単日のトップウェイトを出してきた自信が、今回強く優勝を意識させていたことも間違いない。


練習で一番確実で間違いないと確信を持っていたのがオマタ2連結のウルトラライトテキサス・リアクショントリックだった。ちょっとしたコツがあり、最強のテナガエビ接岸パターンと確信していた。
しかし、本番、テナガの接岸はすでに終わっていた・・・。


自分の予定パターンは、上記の条件に当てはまる場所によって、試合本番にピークになると「予測」していたテナガエビの産卵接岸場所となる水深1m未満の瀬状のロックボトムと葦前ハードボトム、それも梅雨明けの減水約50cmを想定した上での場所でオマタを改造した0・9~1・8gのウルトラライトテキサスのリアクションを軸としていた。


一見、何の変哲もないオマタ3インチ2連結。これを1.8g以下のテキサスで使うと・・・。
ちょっとした変化が時としてバスの五感に強く訴える事がある。


キッカーメインパターンは最も得意だが風によっているかいないが明確な神出鬼没の杭撃ちでのアベラバ系、揃えてからのスーパーキッカー獲りにドノーシャッド(ミドルダイバープロト)で霞ヶ浦・古渡、西の洲の浚渫堀残しの岩盤1・5mを考えていた。
このドノーシャッドにはちょっとした偶然が生んだ秘密があって、不思議なほど「バスを釣る能力」においては秀でた才能を持つ事に公式練習の時に気が付いていた。結果的にそれを信じた本堂が驚いた事に全てのバス(計35本)を、晴れの天候にもかかわらずこのドノーシャッドで釣り切り、9位に入ったことは驚きだった。そして、雨なら同様の場所で最初の一手にワドルバギーを斥候として投入する予定で臨んだ試合だった。


全てのバスをドノーシャッドのみでキャッチし、9位に入賞した本堂。
自分も直前練習で気が付いていたが、プリプラの戦略を優先させてしまった。


無論、稀ではあるが北東風北西風の可能性も考えていた。霞水系は北東の強風が吹くと釣りができる場所が極端に少なくなる。夏場に格好の地形を持つ場所ほど、冬の風には弱い定石通りの湖なのだ。北系の風に強いエリアは秋冬に言い越冬エリアであり、それゆえ北の風が吹くと夏にい場所は極めて少なくなる。故に人が集中しプレッシャーも上がるため、水門や北利根川のようなマスターズ選手が好む粘り勝ちエリアが強くなってしまうのだ。自分に後手があるとすればこれと考え、絞りに絞った確実にバスを獲れる北東風に強い、ワカサギが溜まる浚渫ピンを2箇所準備していた。この2か所が機能しなかった場合、北東風の場合は北浦北岸の杭撃ちをメインに考え、実際に試合ではそれを実行したのだが、結果的に浚渫に時間を大きく割いた事で後手に回り、いち早く的確にランガンを繰り返していた優勝の北選手の後手に回る結果となった。

単杭は1個所1本狙い撃ちが基本、結果が出るまで5分もかからない。杭撃ちは条件によって変わる「良い杭」が解るプロが撃ちだすと、確実にバッティングする。しかも誰かがバスを抜いた後かどうかが解らない超ピン一投勝負だけに、後手に回っているのか、先手で回れているのか、結果は試合後になってみないと解らない。一度抜かれた杭に別のバスがすぐ付く事はまずないのだ。今回、北選手が表彰台の中央で「北浦の杭です」と言った瞬間、同じ事をしていた自分に何故バイトが無かったのか、その理由が解った。


結局、2日目にウェイインした唯一の霞本湖のキロアップはドノーシャッドダイブ(プロト)だったと言う皮肉さ。
プリプラのテナガエビパターンは小バスパターンへと終焉していたのだ。


結局、想定はしていたものの一番、手薄だった北東強風対策が裏目に出た。初日が北東強風で中止になった事で2日間ならさらに有利になったかに思えたが、まさか2日目3日目まで北東が続くとはまさに想定外だった。初日、5尾は揃えたものの、テナガエビパターンを喰ってきたバスはおよそ想定外のスモールキーパーに変わってしまっていた。キッカーを杭で1本入れたが続かず2360g、結果、2日目だけで大逆転を狙わざる得なくなり霞本湖に勝負を掛けるが、朝一にドノーシャッドダイブで1140gをキャッチ、続けて2連発するが抜きあげでミスしてしまう。その後は完全に風が止み、食いが完全に止まった。霞本湖にくぎ付けにされた上、帰路の杭撃ちも後手に回り万事休す。自分の最終チャンピオン奪還計画4年目の目標は無念にもここでまたしても潰えてしまった。


自分の立ち位置がハッキリと結果で示されるのがトーナメントの世界。
それが嫌なら辞めればよい。だがトーナメントでしか味わえない、バスフィッシングの真実が間違いなくそこにある。


過去3年、チャンピオン争いには致命的とも言える1戦は落とす事はあったが、後半戦の鬼気迫る捲り上げで常にトップ5にランクインしてきた。これは正確な状況判断と年齢以上の豊富な練習量の賜物だった事は間違いない。そして今年の状況は体力的、メンタル的にはむしろ向上してきているのが事実で、特に体力面では過去5年もっともよいと言っても過言ではない。それでも絶対落としてはいけないこの試合を致命的な順位で落としてしまった事は悔いても喰いきれない悔しさだけが残った。今年はクラシックが再び北浦で開催される。しかし、参加資格は上位10人のみ。ここに食い込む事すらもはや奇跡に近い。
それでも自分はまだ諦めてはいない。試合はその試合の勝ち負けは明確に存在する。しかし、人生における勝負の勝ち負けは、負けたと自分が思わない限り「決着」はしていない。「決着」を決めるのはその人の気持ちの「決着」なのだから。

 

 

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