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インスピラーレ新4軸講座(2)DG編
今回もヘビーな講義です。なかなか聞けない話なんで、寝ないでね。



ではX状の模様が入っていれば最先端バスロッドかと言うと、これまたそうでもない。バットの飾り巻きにすぎないものも多数存在する。実はこのX補強工法のモトネタは、昔から優れたロッド制作には既に長年採用されていると言う事は前回書いたとおりだ。
Xテープ(ファイバー)や4軸工法は、従来の「タケノコ巻き」の強度を損なわず各段に軽量化させた補強工法である。同時にここ数年のハイエンドバスロッドの多くは、各メーカーの主張にはそれぞれ我田引水的傾向もあるが、概ね、低レジン・ピュアカーボンシートの角度を付けた「バイアス(斜線)巻き付け工法」が常識的コンストラクションとして定着している。



竹竿(バンブーロッド)は究極の竿の天然基礎構造かも。
バイアス巻きなどもはや竹の子供レベル?



ちなみに発売当時は力説しても理解されにくかったが、クロスファイアーはタケノコ巻き、かつ当時「触れることすらタブー」とされた最も厄介なスパインフリー製法で製造されており、自分的には過去のシリーズの中でもスタリオンやリベリオン、スティードは一番好きなブランクだった。



今年、生産終了が発表されたクロスファイアーシリーズ。
そのコンセプトはインスピラーレに確かに引き継がれている。



しかし、このタケノコ巻き、最先端の超低レジンの極薄シートを角度を付けて巻く事で、驚異的に軽く機能的には素晴らしいロッドに仕上げる事も可能なのだが、結局は「軽すぎるロッドは実戦強度が弱い」と言う物理的現実は完全に克服されたとは言えなかった。
2000年直前のバブル末期、7フィートヘビーアクションで100gアンダーと言う常識外れの超軽量高感度至上主義がバス業界を席巻し、各社が軽量化戦争に躍起になった時代があったが、今はそれを最大セールス的に宣伝するメーカーはないに等しい。この時代はロッドの破損が最も多かった年代かもしれない。



琵琶湖最後のJB公式戦となった2003年ワールドシリーズ(現TOP50)。
この年、最後の琵琶湖戦を優勝で飾った。奇しくもXFスタリオンの最初で最後の琵琶湖デビュー戦だった。



そして、その反動か、それとも琵琶湖リリ禁、外来生物法指定により日本のトーナメント人気が急激に衰ろえた影響か、特に主流だったジグワーム系ロッドは2003年前後からトーナメントを意識した超軽量化高感度ではなく、タフ&トルク(柔軟性?)重視へと急激に変化していった。
ビッシっとした金属的な張り、そして電撃合わせを社是として主張していたEGですら、反転させて喰い込ませる間が重要と、今までの伝統のコンバットコンセプトを180°転換してきたのには正直、言葉で言い表せないショックを受けた。今でこそ言えるがこの時はエバーグリーンを辞める決意を告げた程、ショックを受けた。



今も積極的に自ら察知し、瞬殺で掛けに行くコンバットの魂は失ってはいない。
自分のロッドの原点は今もコンバットスティック、そしてインスパイアーにある。



確かに硬くて張りの強いロッドは使い手を選ぶ。正直、硬い竿は売れないのだ。
しかし、本当に強いプロは今も昔も、ロッド以上に「ラインスラックを使いこなす達人」なのだ。すなわち硬く張りのあるロッドでも、柔らかいロッドの様に扱う事ができる。しかし、この事実を理解してくれる一般アングラーは今も少ない。
メーカーは販促によほど自信がない限り、売り難いロッドは作りたがらない。プロの好み通りに作られたプロトが、そのまま市場に完成品として出るとも限らない。メーカーと選手の力関係次第では、それに文句も言えないのも実情だ。
この頃、時代の変化と共に圧倒的な張りと硬さで捻じれる前に仕事(フッキング)を完了させた初代ボロンコンバット、高弾性テムジンのコンセプトに限界を感じていた。もし、EG社長がコンバット史上、最悪の歩留まりとなったクロスファイアー生産を受け入れてくれなければ、EGを辞め(株)イマカツで全てロッドを作る方向へ転換していただろう。



金属的な張りを継承した電撃系コンバット、そして高弾性テムジンは、時代の流れからクロスファイアー路線へと
転換を余儀なくされた。スタリオンはそんな苦悩から自分を救ってくれた名竿だった。



故にクロスファイアーでは、張りを極力抑え、竿先のブレを極限まで排し、どんな態勢からでも芯を外さずフッキングへと瞬時に持ちこむ電撃的フッキング能力、同時にパワーを逃さずロッド全体で伝える柔軟性のバランスを目指した。コンバットスティック伝統の信念と意地を捨てず、かつ、初めて不本意ながら時代の流れも考慮に入れてデザインしたロッドだった。
それだけに当時心血を注いだスタリオンとリベリオンには特別な思い入れが今もある。スタリオンには映画「ロッキー」のスピリット、リベリオンの意味は「反逆者」、このネーミングに自分の想いを込めていた。



紆余曲折はあったが、それでもエバーグリーンは自分のホームである事に変わりはない。
そして多くのコンバットファンがいる限り、「掛けて貫く」コンバットスティックの魂を受け継いでいきたい。



話がそれたが、それ故にクロスファイアーは、4軸全盛となった今も自分にとって最高のレベルにある事は間違いない事実なのだ。ただ、当時、クロスファイアーに安心できる実戦強度とトルクを求め続けたら結果的に厚肉になり、厚肉特有の「先重り感」に似た重さを残してしまう結果になった。
これをトルクと言えば聞こえはいいが、リベリオンやスティードは66Mクラスとしては重く感じられたのか、自分の大きな期待とは裏腹な人気になった。ただこの良く言えばムッチリ、悪く言えばズシッとした、なんとも言えない濃厚なフィーリングが個人的に良いと思う事が多々ある釣り方もあった。故に更に重く感じるスタリオンのヘビーデューティー版OTM・Wフットガイドで出した所、意外にも高い人気を琵琶湖プロ連中から博した。丁度、時代的に「巻きワーム」ブームが幸いしたのかもしれない。



クロスファイアーやテムジンには、それぞれ名竿と自分が位置付けている機種がある。その個性は殺したくない。



と言う事で、この手にすると細身なのにドシンっとしたなんとも言えない厚肉感を残したクロスファイアー製法を継承した機種を、今回、インスピラーレに残したのは正直かなり冒険だった。なんせ4軸を売りにしながら、ほぼ4軸なしの機種を投入する価値が理解できるか否か、不安ではあった。だが、インスピラーレは全てが原点回帰の「エゴイスト」主義なのだ。
これらの機種には末尾にDGと冠されるが、その意味はスパインフリー設計、機種によって「DESIGNO」神谷の指定工場で生産している事、濃厚カーボンと言う意味の「DENSE(濃い)グラファイト」の頭文字DGを掛け合わせたものである。
現在、コブラDG66M、そしてスタリオンDG69MH完成しており、続いて難産のガゼーラDG66〜65ML他複数機種が1年以上テスト中である。



神谷のアクション出しは天才的。
最高においしい料理を口で伝えるの不可能だが、その味を知る神谷はすぐに理解してくれる。
共にTOP50AOY獲得者だからこそ理解できる事がある。



このコブラDGとスタリオンDGのガイドセッティングは極めて特異で、敢えて両者ともガイドセッティングをティップ方向に詰めた先重りセッティングをしており、コブラDGに関してはマイクロガイドを完全に排除した設計になっている。コブラの剛性感がありながら撓るややダルさのあるフィーリングには、ピンピンしたマイクロガイドのフィーリングが合わず、ガイドの重量とロッドバランスを計算したうえでの独自の巻き物重視セッティングに仕上げた。
コブラとスタリオンは性格的には兄と弟の様な特徴を持っており、ロッドのパワーが存分にルアーに載ってくるような、キレよりノリ重視のスィングインパクトと、弓の大腰の様なトルクフルな曲がりが特徴だ。竿全体をしならせるローテーパーで、スローアクション気味に感じる機種である。最終テスト中だったためショーでの公表は避けたが、スタリオンDGのブラックシリーズ、スーパースタリオンのブラックシリーズには極めて珍しい「オールチタンWフットのセミマイクロガイド」の琵琶湖仕様が決定している。



今月25日発売のルアマガ&TSRに更に詳しいインスピラーレの詳細情報が公開されている。
Wフットマイクロシステムは要注目。



もうここまで説明すればこのDGのラインナップの意味は解ると思うが、まさに下段に構える巻き物を意識したバーサタイル機種である。ここ数年、自分的には巻き物のノウハウ、実績はTOP50レベルでも最強レベルに達している自信がある。今回のDGの投入はその自信の表れでもある。
ただ、双方とも厚肉特有のタフさがあるため、岸釣り取材でコブラはワイルドフィネス、スタリオンはワームジグ用として頻繁に使っている。竿を立てた時の上段フィーリングは間違いなく4軸系に劣るが、寝かせた下段ならDGシリーズだ。打撃系の4軸、寝技のDG、インスピラーレはこの2つの方向性を過去のシリーズからインスパイアされ、更に進化して誕生したシリーズである。



しゃべるのも大変だけど、書くのは100倍大変です・・・。横浜はなにしましょ?



さて、この2回に亘ってロッドのコンセプトを詳しく解説してきたが、一つ覚えておいて欲しい事がある。
それは、幾らロッドやリールが進化しようとも、幾ら難解で斬新な新素材や新機軸を採用してようとも、結局、その性能差など、「使い手の能力差」でカバーできてしまう微々たる範疇であり、道具が釣果に決定的な差を付けるものではない。
自分が全身全霊を賭けたトーナメントでバスと真剣に向かい合う時、その瞬間にバイアスや4軸がスゴイのどうの等、実際の所、考えた事もそんな余裕もない。ただひたすらに釣りに集中させてくれる事…シンプルだが自分が道具に求める一番大切なことなのだ。
すなわち、釣り人は往々にして道具に凝れば凝る程、釣りの本質を忘れがちになる。本当に上手くなりたいのなら、「狩人(ハンター)」としての本能、集中力を如何に鍛えるかが大きな差になる事を忘れてはならない



結局、道具は補助用具にしか過ぎない。野生を相手にした釣りの本質は、人間に秘められた狩猟本能で決まる。



PS:ショー並びに事務所宛てに送って頂いたチョコレート及び手紙等、いつも確かに受け取っております。お返事はできませんが感謝しています。有難うございます!

 

 

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