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インスピラーレ・新4軸構造講座その(1)
今回はロッドの工法講義です。寝ないように。




忙し過ぎて久々の更新でスイマセン…。シーズンが始まる前にやること多すぎ…。

と言う事で、最近実釣ネタも無いので、今回はEGブースTSで好評だった「4軸講座」についてここでもう一度解り易く解説しておきたいと思う。
もとは業者日にあるファンから、「4軸って普通のロッドと何が違うんですか?」と聞かれた事からこの話をセミナーで解説したのだが、意外にも多くの釣り人が現在バスロッドで主流になりつつある4軸系「X状カーボン筋補強構造の価値」について、その意味と効果を理解していない事に気付いた。そこで今回は4軸工法とは何かを解り易く説明しよう。


万華鏡か楔帷子か、カレイドの4軸は飾りじゃありません。


まず、超簡単に言えば、4軸とはロッドのメインシャフトを網タイツの様なしめ縄できつく締めあげたものである。そしてその最大の目的は「重量を増すことなく、竿の捻じれを抑制すること」にある。
竿の捻じれとは、ベイトロッドの場合、ガイドがロッドの上側についている限りラインはブランクの芯よりもはるかに高い位置を走る事になる。これによって、ラインの負荷で曲げられたロッドは、ある限界点でその負荷をロッドの芯に載せる続ける事が難しくなり、左右どちらかにガイドが突然倒れ込んでしまう「捻じれ」現象が発生する。


ガイドがロッドの上にある限り、ロッドには常に捻じれる力がかかる。
フッキング時、竿先が首を振る様に暴れた経験があるだろう。


この捻じれが発生すると、ロッドが受けるパワーは芯を喰わなくなり、釣り人の意思通りの力や操作がロッドに伝えられなくなる。その結果、十分なフッキングパワーを得られず、バラシや酷い時はベリーから破損したりラインが切れたりもする。キャスト時も同様で、特に捻じって投げるサークルキャストでは、捻じれが発生するとロッドが芯を喰わなくなり、ルアーが正面に真っ直ぐ飛ばず、スライスやフックが多発する。


インスピラーレの4軸バット部分。この構造、何処かで見たような・・・・。


これを防ぐのがロッドの本質的性能差になるのだが、その方法としてガイドが左右に倒れ込まないように、捻じれる方向に左右からつっかえ棒の様にX状の骨格にも見えるカーボン縄で締め上げ、捻じれないよう支えてやるのが4軸工法である。すなわち竿の縦方向(ティップ方向)に1軸目「対伸縮補助筋」、真横方向(円周方向)に2軸目「対楕円変形防止筋」、それにX状の角度で「対捻じれ防止筋」を右45°の3軸目、左45°の4軸目として配置し、メインシャフトを締め上げるカレイド独自の工法である。


X状のカーボン筋(3.4軸)が捻じれを抑制する。


これはまさに東洋一のつり橋である明石海峡大橋の構造にそっくりなのである。長大な橋程、単純な上下運動には耐えれても、ひとたび捻じれてしまえばあっけなく崩れてしまうのと同じで、捻じれの恐さは長モノにはまさに致命傷。しかし、吊り橋だけにその全てをコンクリートで固めてしまえば余りの重さで橋自体を吊ることすら不可能になる。可能な限り軽量で捻じれ剛性を上げるために、明石大橋を始めとする吊り橋にはちょうどカレイド4軸と同じような鉄鋼の骨組みがX状もしくはV状に組み込まれている。


東洋の芸術、明石海峡大橋を見るたびにカレイドを思い出してしまう。ホンマにそっくり。


ロッドの補強もまさにこれと同じで、昔は橋で言う所のコンクリート式、すなわちレジン(接着剤の様なもの)量の多い分厚いカーボンシートを幾重にもロールケーキの様にマンドレルに巻きつける肉厚工法でこれを実現してきた。同時に軽量化に伴うブランクスの強化のために、古くはボロン繊維、アモルファス金属繊維、アラミカシート、アラミドヴェール、ケブラー繊維、チタンなど、純カーボン以外の強化素材をプラスする方法が生まれて来た。
しかし、現代の航空機産業の進化を見ても、最終的に異物性の素材と無理にハイブリッドさせるよりも、ピュアカーボンそのものが持つ特性を100%引き出す事が結局、性能面はもちろんコスト、生産性、汎用性において最も安定した高性能を出せると言うのがカーボン技術開発の近年の主流となっている。


結局、なんにも足さない、何も引かないピュアカーボンの本質を活かすの現代の主流。そろそろ眠くなってきたかな?


その中でも現代の高品質カーボンロッド工法の既に常識とも言えるのが低レジンの極薄カーボンシートを「タケノコの皮」ように一枚一枚角度を付けて巻きつけていく通称「バイアス(斜線)製法」だ。解り易いように、自分は「タケノコ工法」と呼んでいる。
この方式は捻じれに対しては非常に有効でクロスファイアーはこの工法をベースに、捻じれの芯となるスパイン(背骨)を極力排除する「スパインフリーコンセプト」を初めて表に打ち出した機種である。ただ、この工法は非常に生産上の歩留まりが悪く、スパインを減少させる上でどうしてもロッドの強さと軽量化の両立には限界があった。


テムジンのアマフリバリスタ。こちらはケブラー素材。
よく見ると、既にこの頃から45°の角度が付けられて巻かれている事が解る。


そこで5年前、この欠点を遂に克服し究極の軽さと捻じれに対する強度を両立させたのが4軸クロスの登場だった。簡単に言えばタケノコ工法の外周シートの代わりに、「肉盗み」された超軽量の楔帷子状のカーボン縄を纏わせたのがクワトロクロス工法である。カレイドの最大の長所はそれを要所に纏っている所で、捻じれの補強は「捻じれる部分に入れてこその4軸」なのである。


カレイドに採用されている45°X45°のクワトロクロス。
伸縮潰れ方向には中弾性24トン、捻じれ方向の3軸4軸には高弾性30トンを使い分け。
インスピラーレでは更に熟成度を増した。


そしてそれから5年、自分的にこの4軸工法を更に熟成するため様々な新手法をテストしてきたわけだが、その過程では「ハニカム6軸」もテストしてきている。このハニカム補強は確かに2軸方向への「潰れ」に対しては目を見張るものがあったが、目玉が飛び出るほどのコストと、細く捻じれる部分に巻きつける場合の最悪の歩留まり、肉盗みの少なさから、費用対効果で良しとする理由は見当たらなかった。


蜂の巣の様なハニカム6軸は確かに楕円潰れには最強だが、
超コストアップと細い場所には極めて巻き難い短所があった。
今回は見送ったが、将来はあり得るかも・・・。


それよりもむしろ、カレイドの開発過程で気づいた、よりX状の3軸と4軸の筋量を上げる事の方が遥かに実戦として効果を実感できた。3軸と4軸の筋量を上げる方式とは、同一の長さの中でX補強の密度を上げるため、45°で組んでいたカレイド式を、更に30°狭角にした改造型クワトロクロスである。インスピラーレには、更に熟成度を増し、コストを上げずに効果を最も感じられる30°狭角4軸を、より積極的に採用している。


こちらが30°の角度で密度を上げた最新の四軸。
インスピラーレ・ブラックレイブンには、ほぼ全身にこの狭角高密度4軸を採用した。超軽量ながら強度は抜群。


特にヘビーユースとワイルドフィネスの両立を目的とした超軽量高弾性高靭性の新型「ブラックレイブン」には、最も製造難易度の高い工法である30度狭角4軸をほぼ全身に纏わせている点で、インスピラーレの影のフラッグシップと言っても良いかもしれない。ショーでは展示出来なかったが、テスト中の新機種にも同様のモデルが複数存在する。


インスピラーレには狭角30x60と熟成の45x45の双方を、バット〜ベリーにかけて適材適所に採用している。


ただ、インスピラーレはその企画過程で、4軸を敢えて排し、旧来の肉厚タケノコ工法を選んだ機種があるのもまた最大の特徴でもある。こちらは完全なクロスファイアー製法の踏襲進化であり、DG「DENSE GRAPHITE(濃厚グラファイト)」と名付けた「肉厚中脂肪カーボン」を敢えてコブラDG、そしてスタリオンDG、そしてショーには出展できなかったがガゼーラ65ML(旧称コブラDG66ML)に採用している。このDGにはデジーノ神谷が生産に関しても大きな役割を果たしていることも意味する。


年末、ブラックレイブンのワイルドフィネス(WF)でオカッパリの50アップを仕留めた。
2.7gフジラバに14ポンドFMV、強引なブッコ抜きも何ら問題なし。ただしWFにラインはマジ超重要。


そして、復活した“早すぎた天才”「エゴイスト」にはテムジンの超高弾性工法に加え全身30°&45°ハイブリッド4軸武装と言う、超高弾性を補完する時代の最先端コンセプトを纏い復活した事を記しておきたい。

次はインスピラーレのもう一つの特徴であるオリジナルガイドシステムの選択理由、そして敢えて「持ち重り感」を残したDG機種の深い解説をしてみたい。お急ぎの方はルアニュース22日(金)発売号に先行紹介したので御覧下さい。


 

 

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