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私のエリート5・後編の巻
2日目、早朝からの大雨が全ての予定を狂わせた。バケツをひっくり返したような土砂降りでサイトどころか視界ゼロの真っ暗け・・・。急な雨、増水傾向から当初のプランだった下流中流ではなく、ビッグサックを狙って本流最上流に行くか、初日終盤よかった瀬戸川バックウォーター付近の大岩に再び賭けに出るか散々悩んだ。挙句、昨日の実績から瀬戸川バックウォーターを選んでしまい、これが大失敗。この大雨は逆に大減水時に固まった泥を溶かしてを流し込み、水温低下、ペーハーショックを起こしたのかキーパーのバイトすら完全になくなってしまった。状況に臨機応変に対応するのではなく、やってはならない釣れた過去の印象に引きずられる大失敗だった。

2日目、一転して朝から大雨に。
真っ暗でカメラも写らないほどの悪天候に。
更に激しく降る雨。途中、苦し紛れにハスキーハスジージュニアを試しに投げると1投目からビッグバスが出た。しかしこれをミスってしまい、最悪のバッドメンタルコンディションに・・・。
結局、どっちつかずの中途半端な攻めで10時を回ってもキーパー1本すら取ることが出来ない。初日首位の意識が少しずつ歯車を狂わせたのか。勝利以外意味のないこの大会、リスク覚悟で怒涛の攻めに転じているであろう若手の動向に焦りはピークに達していた。

雨の中、本流上流部でティンバーフラッシュJRを炸裂させた関和選手、
出遅れた私は完全に関和選手の後追いの形になってしまう。
そしてこの窮地を救ってくれたのは思いがけないルアーだった。11時頃、後手を覚悟で追い込まれるように上流1番人気の白滝ワンドレイダウン群に入る。幸運にも誰もいないと思っていたら最奥から関和選手が出てきてしまった。余裕の雰囲気から完全に後手に回ったことを悟った。案の定バイトは全くない・・・。もう諦めてワンドを出ようかと思った時ふと、何故かボックスの中の僅か4本しかないバークレイの古いプロトワーム「ファットドーバー」が気になった。これは以前、ドーバークローラーを作った折に試しに更に太めのドーバーをガルプではなく通常のマテリアルで作ったものだった。それをこのときスピンコブラPEシステムに付いていたRVジグではなく、敢えて自作キングコブラブラシガード付きのジグヘッドワッキーにチェンジした。

今回、影のMVP、「ファットドーバー&キングコブラ改」
その狙いはレイダウンの途中の細い枝にでもより「載せ易く」、ゆっくりフォールで誘えるスタイルにしたのだ。私のジグヘッドワッキーは決して無理に動かさない、フォール&カバー引っ掛け重視のスタイルだ。今にして思えば、よく面倒臭がらずにやったものである。

あるとないとでは天と地ほど結果を左右したスピンコブラ
まさに勝つためにのみ存在する特殊兵器だ。
バスのポジションとバスが求めているルアー、そしてリズムが一致したとき、バス釣りとは本当に不思議なほど素直に答えが返ってくる。面倒臭がらずにいろいろ試せばいままでのノーバイトはいったいなんだったのかと思うほど、違う世界が開けることが「たま」にあるのだ。
正に怒涛の連発だった。関和選手が攻め、私自身が攻めたその後の同じレイダウンからバスはウソのように次々と出てきた。僅か1時間、2本のナイスバスを含め瞬殺でリミット達成。

起死回生、パワーフィネス「ファットドーバー」で
怒涛の4連発!!
もしこの怒涛のリミットメイクがなければ大雨の中、私のメンタルはたぶん崩壊していただろう。この時のタックルはスピンコブラにPE1.5号リーダーシステム12ポンドフロロ1mと言うセッティングだった。使った時間こそ僅かだったが、この試合の影のMVPはこのファットドーバー&スピンコブラだった。このテクニックについてはたまたまプラ中に撮影していたので近日、動画公開したい。

ガルプ・ドーバークローラーとの比較。
リブも太さも素材も違うボツにしたプロトタイプ。
そして二日目ラスト1時間、祈る気持ちで見に行った最後のビッグフィッシュが垂直岩盤の流木の下に見えたときは、たぶん映像的にはシラフに見えるが内心は心臓が爆発しそうな気持ちだった。ネットイン寸前、かなり赤面級の祈りを呟いてしまった。この最後のバスを仕留めれたことが結局は直接的勝因になった。リグはRVジグ最軽量の1gに「ナベ巻き」と呼ばれる極めて少量のシリコンラバーを巻いたもので、トレーラーには桧原湖戦準優勝以来愛用しているハンハントレーラーを選んだ。ロッドは「エアリアル・スパイダー(仮)」、虫系浮かせ系ルアーの操作に卓越した専用設計ロッド、フージーが心底溺愛のロッドだ。

F認定品のRVジグ1gに最小限のシリコンラバー、
通称「ナベ巻き」。サイトとスイミングに使用。
今回、ビッグバスが濁りの中でもサイト出来た、その決め手となったある特徴的な場所とは「規模の大きなワンド出口付近の垂直岩盤のオーバーハングした岩棚の陰」だった。減水と濁りから最も安全な場所、それがまさしく垂直岩盤の岩棚だったのだ。しかし、こいつらが付くのはその一番浅い、オーバーハングした棚の真裏に張り付くように浮いているため、極めて攻略しにくい難易度の高い付き方でもあった。普通にサイトしただけではまず見えることはない。必ず浮いていると仮定した上で凝視して初めて何箇所かで微かにバスらしい影が見える程度だった。いくら澄んできたとはいえ、かなりの濁りの早明浦で、誰もサイトなどメインに考えなかったのが大穴だったことは間違いない。しかも見つけさえすれば、水の濁りがバスを騙しやすくさせており、喰わせるのはアプローチさえ間違えなければさほど難しいことではなかったのが幸いした。

私のエリート5は当初の予定と全く違った展開になった。しかし、どんな形であれこのタイトルは本気で欲しいと思った。その本気の気持ちがウエイインのときに爆発したのだろう。

また来年もこの素晴らしい試合に出れることを願いたい。
投票してくれた皆さん、ありがとうございました。
キーパーのリミット達成など何の意味も持たないこの少人数エリート選抜制、時間を大幅にロスした後、ライトリグでもビッグベイトを倒せる唯一無二の戦法、それは勝てるビッグフィッシュを目で確認しサシで仕掛けるサイト以外にはなかった。追い詰められ、絶体絶命の窮地の中、まるで顎の先端、ここしかないと言う場所に、針の穴を通すような奇跡のカウンターが決まったような気持ちだった。
それは同時に急速なスピードで成長し続ける若手選手の柔軟な考え方、体力、そして野心に満ちた闘争心に防戦一方のベテランの意地の抵抗でもあったように思う。

その悔しさが次への力、
ゆえに2位はRUNNER UPと期待をこめて称される。
しかし、もう若くはないがバスフィッシングはその経験と老獪さにおいて彼らがまだ知らない世界を幾度も私は経験してきている。全身全霊を賭けて戦うにふさわしい舞台がある限り、彼ら若手の超えられそうで超えられない大きな壁であり続けたい。

 

 

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