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K.imae Today's Tips 123 『ルアーニュースクラブ・ディレクターズカット』

トップ50第4戦桧原湖が閉幕した。結果は久々の表彰台復帰となる5位入賞。初日、大会マックスウェイトとなる5525gをマークし、予選を2位と500g近いリードで首位通過しての決勝5位転落は本来、喜べるものではないかもしれない。
しかし、第3戦の旧吉野川決勝で掴みかけた復調の兆しが、今試合で自ら確信へと戻る大きな意味を持つ表彰台復帰となった。




今試合のプリプラは期間真っ只中のNBC全国釣り祭り広島大会への参加要請のため、過去最短とも言える僅か3日間しか時間をとることが出来なかった。しかし、練習時間は犠牲にしたが、広島釣り祭りは今季最高の参加者数で大いに盛り上がり、その成功が逆に集中力を高めた濃度の高い練習に繋がったようにも思う。
そして、今季TOP50は総重量制に変わったことで、マンネリ優勝パターンとなった「早稲沢船団スモール数釣り合戦」のダンゴ試合の様相が大きく変わる事は間違いなく、戦略的にスーパービッグウェイトが狙える桧原湖の希少種「ラージマウス戦略」が大きな意味を持つことは明らかだった。僅か3日間の練習はそのほとんどの時間をラージマウス狙いに費やしたことが、結果、今試合で大きな価値を持つことになった。




桧原湖のラージマスは、スモールマウス300尾に対し1尾の割合以下とも言えるほど、生息数は少ない。普通にスモールマウスを狙っていて釣れる確率はほとんどないに等しいといっても過言ではないだろう。しかし、檜原スモールの平均ウェイトが500g前後と大型化したとはいえ、スモール天国の桧原湖を成魚まで生き抜いたラージマウスは賢く巨大で、平均ウェイトも1キロ以上、2キロクラスに育つ固体も多い。500gのスモール5尾だと2500gで30位以下は確実だが、ここに1500gのラージが一本はいるだけで3500gに達しシングル順位確実。2キロ1本を入れれば4キロ越えでスモールのみでは奇跡的なトップウェイト級に達する。ただ、ラージマウスを釣る難易度は高くハンパなくリスキーで、トップ50選手60人全員が狙っていてすら、1試合3日間で僅か10本程度しかラージマウスは釣ること出来ない確率である。




しかも、たとえビッグラージ2本を釣っても、5リミットを揃えられなければ今試合の三原のように釣りビジョン同船でビッグラージ2本を仕留めながら、3匹に終わり3キロにも達せず予選落ちとなってしまう。ベースウェイト3キロをマークするなら、丸1日かけて船団釣で600g×5本のスモールだけの方がはるかに確実なのだ。しかしそれでは最初から優勝は捨てていることと同じで、どこかでリスクを張って勝負しなければ絶対に勝つ事は出来ないだろう。ラージだけでも勝てない、スモールだけでも勝てない、今季の総重量制になった桧原湖は例年の「守備的戦略戦」とは全く違った極めてゲーム性、ギャンブル性の高い、より勝負師向きの「根性試し戦」となった。




そして、現実的にこのラージマウスを確実に狙って釣るには大きく分けて2通りしか方法はないその2つの釣り方とはビッグベイト、そしてサイトフィッシング(ネストではない)の組み合わせである。
今回、自分が直前公式練習でとった戦略はプリプラにラージを見かけたエリア周辺を徹底的にサイト。同時にラージが付きそうなスポットに対してビッグベイトを通し、ラージのチェイスを誘い出し、戻る場所を確認する作業に徹した。この際、釣れる釣れないは別として、「バスを誘き出す集魚性能」に関してはバスロイド、ギルロイドの体高のある強波動系が圧倒的に優れていた。点で誘い出すバスロイドと線で引き出すギルロイドブーツテールを交互に投げ分け、キロアップ3本と、巨大なラージ2本の居場所を突き止めた。

見つけたバスに対し、リアクションで釣るか、喰わせるかは状況次第で、リアクションには小型のSGプラス改3D。サイトには色々試した結果、ダントツにイールクローラー4.8ノーシンカーのインチスモーククリアベリー、もしくは5.5インチノーシンカーのウォーターメロンホワイトベリーにラージ、スモールともに反応がいいことがわかった。特に大型ほど5.5インチに強く反応するようだった。色の差による反応の違いがかなりあると感じた。




これらサイトのタックルは昨年の最終戦旧吉野川からずっと改良に改良を重ね続けてきたパワースピニング3機種に0・6号、0.8号、1号のPEライン、リーダー6、7、10ポンドと言う極めて強靭なスピニングシステムを組んだ。今回の初日トップウェイトはほぼ全てこのタックルで仕留めたが、900g前後のスモールのサイトは勿論、最大の57cm2000g、48cm1500gのラージすらブッシュ越しに5.5インチイールノーシンカーでまさに秒殺で仕留めている。今回の桧原湖戦トップウェイト達成をもって、試合後、PE対応のパワースピニング上位3機種にようやくGOサインを出すことが出来た。長い長い迷いの道のりだったが、フィネスに超人に対抗できる、これが自分なりの今後最強の右腕となってくれるだろう。




だが、今試合、琵琶湖の5尾15キロに匹敵するといっても過言ではないスーパービッグウエイトを初日に出すことは出来たが、結果的には練習不足による自分の対応能力の狭さを痛感することにもなった。今回の敗因は天気予報が期間中3連台風の影響でずっと曇り~雨だったはずが、3日間とも予想外の猛暑晴天無風となり季節が一気に進行、同時に台風対策で桧原湖の放水量が増え急激に減水、ラージと同エリア同水深に混在した700g前後のグッドスモールが一斉にを消し、一段深めにポジションを変えたことにある。




2日目、初日に取りこぼしたラージを再びバラシてしまったこと、そして減水によってサイトのバックアップだったスモールがどんどんサイトの限界水深に移動し始めていたのが手にとるようにわかった。しかし、そのミドル~深場に落ちはじめたスモールを釣る術を持ち合わせていなかったため、決勝で2人のスモールスペシャリスト達、そしてディープのバックアップを確実に持っていた選手達に抜かれてしまった原因である。2日目は残していた2尾のラージは朝のバラシと晴天無風の減水で姿を消し、11時までほぼノーフィッシュ。
辛うじて風が吹き始めてから半サイトでスモールを仕留め首位は守ったが、翌日も同じ天候が予想された次点で、時間が短い決勝でのサイトはただの「ギャンブル」でしかなかった。




決勝前夜、このままサイトを続けるか否か、久々に寝つけないほど考え込んだ。そして朝、自分が出した結論は「今回は石にしがみついても表彰台」だった。自分は勝負することを選ばなかった。今の自分に一番必要なこと、それは「勝つ自信」を取り戻すこと。
自分にはアッと驚かせるトップウェイトを出せる爆発力があること、今も表彰台に狙って上がれる力があること、その自信を取り戻どすことが何より最優先だった。
泥臭くても確実に5尾を釣る。確実に表彰台に戻る。決勝はその「作業」に徹した。




過去の経験から月島7~8mディープピンを片っ端から回りガルプサーディンのキャロとDSで600g前後で入れ替えの繰り返し。決勝は凡庸な2900g、しかし、策なくして蛮勇でサイト勝負に出ていれば、結果は時の運でしかなっただろう。運ではなく確実に表彰台に上がれる力と自信を今、取り戻すこと。桧原湖の勝負の女神は紙一重で、その気持ちに応えてくれた。




今の自分には優勝以上に価値ある表彰台。悔しくないかと聞かれれば、それは愚問中の愚問だ。だが、そう久しぶりに心底思えたことに今回の一番の価値がある。

 

 

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