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TOP50最終戦霞ヶ浦報告&2012エリート5出場権獲得
最終戦霞ヶ浦水系戦は自分の試合に賭ける気持ちの強さを試された試合となった。



「折れず、諦めず、信念をもって最後の一瞬まで全力を尽くす、それが自分の仕事。」
これは幾度も凹みに凹んだ今季、試合後の翌朝、最低最悪の気分の中で、念仏のように唱え続けた「魔法の呪文」である。


なんの見せ場もなかった今季、それでも絶対に折れない気持ちだけは持ち続けた。


昨年の苦杯からTOP50シリーズチャンピオン奪還を誓って臨んだ2012年シリーズ。体調面の回復から、ここ数年では奪還への強い自信を持って臨んだ今シーズンだった。
しかし、絶対的自信をもって迎えた開幕戦初日、気負い過ぎたのか全く噛み合わないまま35位と出遅れ。その初日終了直後、豪雨によるダムの警戒水位予測から決勝が中止の決定、劣勢を残り1日で挽回せざるを負えず無理を承知で勝負に出た結果、最悪の39位スタートとなった。この開幕戦の誤算が精神的にどう影響したのか、その後も第2戦北浦水系、第3戦檜原湖と共に予選は優勝を狙える3位に着けながら共に決勝で大失速…。
絶対絶命となった第4戦旧吉野川でも、初日好スタートを切るも2日目、5尾以上のバスを掛けながら今季最悪のミスを連発し自滅。


さすがに心が折れかけた第4戦旧吉野川。
馬淵の優勝と気迫が消えかけた炎を燃え上がらせてくれた。


この時点でシリーズランキングは11位、今季公約としたシリーズチャンピオンは事実上絶望、最低ノルマとしたエリート5出場権枠である上位5名にすら、現実的にはほぼ絶望となった事は誰の目にも明らかだっただろう。
それどころか、この時点で11位〜20位までのポイント差が混戦となり、最終戦霞ヶ浦を外せば、クラシック出場資格である上位20名からも容易に脱落する可能性の方が高かった。

今季から人気選手の招聘やシード、メーカー、地元特別推薦枠が完全に廃止され、各カテゴリー上位ランカーのみで競う真の最高権威トーナメントへと回帰したJBクラシック。しかもホームの旧吉野川が会場。この出場権だけは最低最悪でも取らなければ話にならない。
それだけに、最終戦霞ヶ浦は絶対に外せなかった。ここでこのまま1年を終えるわけにはいかなかった。


直前公式練習は台風で全てリセット。
昨年に続き、またしても白紙状態からのスタートとなった。


しかし、その想いは最終戦初日、無残にも砕け散った、いや、砕け散ったかに思えた。
どれほど願おうとも、どれほど努力しようとも、自然を相手にするトーナメントは非情である。必死で練習したにもかかわらず、外浪逆浦エリアでの巻き物を中心とした初日は僅かワンバイトのみ。結果、ウェイイン1尾560g、48位。
もう何処をどう良い様に考えても、予選落ち(30位カット)はほぼ確定、年間5位以内など露ほどの可能性もなくなった。その夜、暫定ポイントで計算した時、既に自分はクラシック圏内の20位以下に転落していた。予選を通過するには最低でも2日目はシングル順位が必要。ほぼゼロに等しい初日から、どうすればそんなウェイトが出せるのだろう。辛すぎて魔法の呪文もこの夜ばかりは惨めな強がりにしか思えなかった。それでも尚、強く自分を信じるしか奇跡を起こす方法は他にない。


疲れた体に鞭打って、毎日夕暮れまで続けた練習。積み重ねた練習は裏切らないと信じたい。


最終戦2日目、全てはいずれ映像で見れると思うが、実に12時半までノーバイト、ノーフィッシュだった。自分は昔から心がまさに今折れそうになる本当に寸前、もう本当に全て終わりだと悟るその刹那、ごく稀に、本当にごく稀にだが自分でも怖い程の爆発的集中力が漲る瞬間がある。今風に言うならゾーン状態と言うものだろうか。それは水の色が綺麗に思えた沖の鉄杭に吸い寄せられるように立ち寄った瞬間、突然、前触れもなく始まった。
今まで1尾も釣った経験はない場所だったが、何故かそこの水色が他に比べ生き生きと見えたのだ。
そして奇跡は始まった。僅か1時間半、アベラバ2.3g&アンゴビの付いたスティングレー1本だけを足元に置き、他のロッドをベルトで封印、その杭で得たヒントに全てを賭け、実にエリア全域にある「杭」を求め気が狂ったように走りまくった。全ては沖目の「生きた水面にある杭」を探すためだった。ターンオーバーした悪水がこの数日の強風で岸に打ち寄せられ、逆に沖目の水が浄化し始めていた事に気が付いたのだ。
魔法の呪文は生きていた。残り1時間半、狙いは次々と当たり4尾のバスをキャッチ、2日目3280gをマーク、単日9位にランクインし奇跡的に予選を22位で通過した。


予選2日目、残り僅か1時間半で4尾キャッチ。
この1時間半で走った距離は60キロ近いかもしれない。


よもや残れるとは思っていなかった決勝。自力できる最大限の事はトップスコアを出す事のみ。もうそこから先は神の領域だ。ロッドは10本を用意したが、この日も9本を封印、伝家の宝刀スティングレー1本を常に足元に起き、再び全エリアの杭を猛烈な展開スピードで走りに走り、究極の精度で撃ち抜いた。少なくともこの1日は若かりし日の自分の力が間違いなく蘇っていた。究極の集中力、ゾーン状態、その状態をどれだけ維持できるか、その精神力と体力こそが結局はトーナメントプロの強さを決めるのだろう。今の自分にはそれが絶体絶命の窮地に追い込まれないと目覚めないのかもしれない。


愛艇チャンピオン221DCXマーキュリーレーシング300PS、この黒船なくして今の自分は存在しない。


決勝の霞水系は大荒れに荒れた。気が付けば300馬力のエンジンを支えるシリンダーは再起不能、エレキのフットペダルは最後にデッキからもげてしまう程のラフライドだった。これは伝説の黒船チャンピオンだからこそ成し遂げられた奇跡だったかもしれない。
最終戦最終日、ゼロ申告が続出する波乱の決勝。7バイト6フィッシュ、5リミット。3980gトップウエイト達成。


最終戦最終日、ここでトップスコアをマーク。
自力でやれる限界の結果は出した。後は勝負の女神の気まぐれ次第だった。


奇跡は再び舞い降りた。誰もが、自分自身も絶対にあり得ないと思っていた、昨年の最終戦をも上回る奇跡。最終戦霞ヶ浦の成績は11位と振るわないものだった。しかし、絶望と思われた48位からここまで巻き返せた事実が、そしてそれ以上の大波乱となった2012年間最終ランキングが、誰もが最高の重圧の中で迎える最終戦の恐ろしさを如実に語っている。http://www.jbnbc.jp/_JB2012/view_summary.php?t_id=10060&summary=y

勝負は下駄を履くまで解らない。
最後の最後まで、諦めない心の強さが幸運を呼び寄せる事もある。だからトーナメントは本気で感動できるのだ。


この1年、魔法の呪文を念仏のように唱え、我慢に我慢を重ね、地味に、ひたすら地味に耐えてきた結果が、最後の最後に再び奇跡を起こしたのかもしれない。
2012年JB/TOP50年間総合ランキング5位、ポストシーズン最強決定戦エリート5出場権獲得、そして2012クラシック・クオリファイ。今年もまだまだ俺のシーズンは終わらない。


まだトーナメントの神様は引退させてはくれないようだ。
今季もポストシーズン・タイトル戦を戦える事を誇りに思う。

FORTUNE FAVORS THE BOLD.(幸運は努力した者の頭上にしか舞い降りない。)

 

 

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