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TOP50開幕戦を終えて想う事
TOP50シリーズ(旧称ワールドシリーズ)8勝目、通算トップカテゴリー20勝目となった今回のサメウラ湖戦は、
特別な意味を持つ価値ある1勝となった。



何のために戦うのか。予期せぬ病魔から現役復帰し3年目の昨年、必死の思いで自らのノルマとしていた年間ベスト5には返り咲いたが、以前の自分ならその程度の成績で満足するはずがなかったと思う。同時に昨年、北浦戦、旧吉野川戦と2度も優勝できるチャンスを目前にしながら、既に予選結果に満足した表情の自分がいる事にDVDを見て気付いた。かつての自分ならこの2試合も高確率で勝つ事が出来ただろう。何のために戦うのか、思えばもう何年も自分に問いかけてきた質問だった。会社に、社会にバスプロの存在を認めてもらおうと躍起になり、飢えるようにハングリーだった若き時代、勝ちへの執念は誰よりも強かったと思う。

今季開幕戦のために用意したレンジャーZ519は、震災に考慮し小馬力制限となったためデビューする事は出来なかった。しかし、それ以上に価値ある試合が出来たと思う。

2011年TOP50開幕戦は、予想しえなかった非常事態の中、開催すら危ぶまれる事態となっていた。大きなバスを釣って満面の笑顔でガッツポーズは、「死」と直面した被災者にどう映るのか、次元は違い過ぎるが4年前、自ら死を身近に感じる機会があった事もあり、暫く取材やロケに行く気には到底なれなかった。同様に試合へのモチベーションも低下していた。
何より「釣りを通じて復興に貢献する方法」に関し一番悩んだ時期があった。会社から義援金を送ったり、オークションとして出品するのも一つの方法として積極的に活動したが、それを実際の「釣り」を通じて体現する事の難しさ、仕事と言いながら「結局、自分が一番楽しんでいる釣り」を通じて他人の痛みを共有する難しさを痛感していた。

釣りは自分の仕事ではあるが、同時に最高の楽しみでもあり最高の趣味でもある。幸せな仕事だと思う。

そして自分が出した結論は、自分が全身全霊を掛けてバスと向き合えるTOP50トーナメントで勝ち得た賞金の全てを義援金とする事だった。トーナメントには楽しさ以上の様々な感情がそこにある。爆発的な喜びがあると同時に、報われない努力、傷つくプライド、悔しさ、惨めさ、本気で自分の存在とプライドを掛けて釣りをするからこそ、楽しさ以上の感情がそこにあり、時に傷つく事もある。
だからこそ、そこで勝ち得た賞金は自分の魂と努力と情熱の証でもある。そう思った時、自分が「釣り」を通じて復興に一番貢献できる方法は、今年トーナメントで得た賞金全額を義援金とする事だと確信した。トーナメントで勝利を追い求める事で、その手にしたバス1尾1尾の喜びが全て被災者復興の一助になると思えた時、トーナメントを戦うモチベーションを高く持つ事が出来た。
同時に、優勝か、それに限りなく近い順位以外は公表するのも恥ずかしい賞金額である今の日本のバストーナメントの現実において、今年は絶対に1度は優勝しなければならないと言う責任感も生まれた。自分にとっていつの時代もトーナメントでの強さとは、モチベーションの強さである。そして、その決意を聞き届けてくれた「バスフィッシングの神様」が、今回、私に味方してくれた事が最大の勝因だと思う。


こんな気持ちのいい試合は初めてかもしれない。
トロフィーは土佐長町役場に寄贈、決勝日のチャリティーオークションでは80万円を超える義援金が集まり
優勝賞金と共に土佐町を通じ被災地に贈られた。


そして、この勝利は通過点に過ぎない。被災地の復興はこれからが本当の正念場である事を忘れないよう、1戦1戦を戦うたびにその想いを新たに、再び勝利を勝ち取るために全力を尽くしたい。

…To be continued to「The Perfect Pattern」

 

 

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