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TOP50最終戦檜原湖閉幕の巻
水面への浮上を賭けた最終戦。
本気で優勝を狙う気持ちの強さは戻ったが、
それが逆に攻守のバランスを欠いた試合になってしまった。



水面下からの浮上、完全復活を賭けて自分自身、あらゆる犠牲を払って臨んだ最終戦檜原湖。しかし、結果は決勝最下位となる30位、年間順位も9位から13位に落ち、エリートシリーズの出場資格は確保したものの、目標としていた優勝獲得と年間5位以内復帰はならなかった。
今回の試合に関し体調的には言い訳は一つもない。この試合のために事前にやれる事は全てやったし、痛みのコントロールは短期限定ではあるがほぼ、今季最高のコンディションに調整する事に成功していた。プリプラ〜試合中、体調的なミスは今回に関しては全くない。それだけに悔しさ、落胆も今季一番ではあるが…。

プリプラではミラクル・モグチャがシャローで絶好調を維持、
スモールでもいけるかと思ったのだが・・・

今回の試合での敗戦理由は、まずプリプラでライトリグでの安定した「釣り方」を全くと言っていいほど見つけられなかった事だろう。しかも先の旧吉野川戦のイメージが強く残り、徹底した勝負パターンの追求に時間を費やしてしまった。もともと、今の自分が一番不利になる(苦手とする)ウルトラライトリグでの我慢釣りでは、超人の域に達しているTOP50若手選手に付け焼き場で勝てるイメージが全く沸かない。従って技術ではなく、ライトリグで簡単に釣れる「穴場」探しに徹し、1か所奇蹟的に素晴らしいスポットを見つけていたのだが、これに関しては強烈な台風が全てを無に帰してしまった。

来期の対トーナメント用に開発中の極小ハドルテール装備の「ハドルフライ」。
得意のスイミングキャロ専用に作っていたのだが・・・
台風でスポットはもぬけの殻に・・・

本番はこのスポットをキーパー場に、モグラチャターでシャローのグラス+αにつくラージを2本混ぜることで優勝を狙っていた。モグラチャターはプリプラ前半、なんと最初の1投目からラージを手にでき、プリプラ2日目まではスモールの600gサイズも混ざる余裕の展開だった。ところが、次第に過去に例のない急減水が進み、私が狙っていた1〜1.5mのスポットは全て壊滅、水面に切り株、グラスなども顔を出してしまい、プリプラ後半にはラージもスモールもその水深から離れ新しい1.5m〜2mゾーンへ移動している気配がした。慌てて後半はキーパーを確実に釣るフラットの釣り方を探したが、付け焼き刃のウルトラライトリグなど、2,3日の練習でどうこうなるものではなかった。そこで勝負は直前プラの1日をラージ狙い、もう1日をキーパー場確保の練習に当てるつもりだったが、台風直撃で1日しかできず、数少ないラージは直前プラで釣ってしまえばそこは終わりで、事実上、ラージの練習は不可能となってしまった。

プリプラ初期は完全に見えていたラージパターン。
減水と狙った水深が浅すぎた事が仇になった。
プリプラから5度も落ちた水温によって、ラージも一段深めに落ち見失った・・・。

しかし、この台風直撃は事前に解っていた確率の高い情報であり、このままライトリグ勝負になったのではまず私に勝ち目はないと解っていたため、今回は一か八か、自分が最も得意としてきた「サスペンドシャッド」勝負にぶっつけ本番で賭ける決意を試合前に決めた。プリプラでは一度も試していなかったシャッドだったが、かねてから絶対にいつかはチャレンジしたかった「アイスクリーム越え」に急遽、藤木と相談し突貫徹夜で金型改造し、プロトを作成する事にしたのだ。自分が今の状態で若手達に勝るのは、圧倒的な経験とノウハウを持つラン&ガン、そしてハードベイトの戦いである。
藤木もそれは百も承知で、出発直前の2日間を徹夜し20個の新アイスクリームビル「スーパークリーム」を完成させてくれた。

これがスーパークリーム。
JB限定販売のアイスクリームを金型改造したものだが、中身も大幅改造。
リップはまだまだ進化途中。
アイスクリームを遥かに上回る潜行能力をもつ。
ちなみにアイスクリームはプロショップ大塚でのみ現在購入可能。
名前を伏せられる事が多いが、未だに各地で実際にはウィニングルアーになっている。

「スーパークリーム」とはJBルールの50mドラッギング併用で、世界に現存するシャッド型ディープダイバーの常識を覆す驚異的水深先行能力を発揮するものだ。それは今もTOP50各選手が愛用するアイスクリームの比ではなく、同飛距離ではIK500R2すらも急速潜行能力で凌ぐウルトラディープダイビングSPシャッドである。
今回の試合で逆に誤算だった事は、公式練習初日、予想を遥かに超える程スーパークリームが強烈に効いてしまった事かもしれない。冷え込みで強烈にターンが入った檜原湖でハードベイトが効くのは知られた話だが、かつてない水深ゾーンを効率的に、しかもアイスクリームとは明らかに異なる動きのシャッドが侵入してきたのは初めてのことだっただろう。しかもくるバスのサイズは格段によく、これは状況さえこのままならスーパークリーム一本で勝負できると盲信してしまうほどの結果だったのだ。

デカいスモールほど、大きなワカサギを喰っていた。
このバスが吐いた檜原ワカサギのカラーを完璧に自分で塗装していったのだが・・・。

問題は試合前日直撃となった強烈な台風の後がどうなるか、これだけは読めなかった。しかし、結果的に今回の試合も事実上、スーパークリーム一本勝負に賭けてしまった。最低でもお立ち台でなければ年間5位以内復帰は望めない。それも上位5人が崩れる場合があっての話。エリート圏内をほぼ確実にした今回、ライトリグ合戦で凡庸な結果を求めても仕方がなかったし、正直、旧吉野川の快感が頭を離れなかった。
そして初日、4本中3本をスーパークリームで19位、2日目も4本中3本をスーパークリームで16位に順位を上げた。2日間リミットが揃わないにもかかわらず、最終日次第ではシングル上位を十分狙えると感じていた。リミットは揃っていないが、そう思える理由があったのだ。

スモールが大の苦手の渡辺ですら簡単に600gサイズをキャッチしていた直前プラ。
ただ、皮肉にもターンで濁りまくった今回は、たった3つ試しに作ったブルーチャートが圧倒的に効いた。
試合初日に全てロスト・・・。

タラレバではあるが、2日目はその1尾でトップウエイトに迫るキッカーを2度もランディング寸前で口ギレによるバラすと言う、旭川と全く同じミスを起こしてしまった。
原因は明らかにタックルシステムの熟成不足によるミス。僅か1日の練習で組んだタックルはロッドがスーパースピンコブラQ7に海用ステラ3000HG、そしてラインが0・3号のPE、FGノットで4.5LBのフロロショックを1.5mというシステムだった。このシステムにある細工を施す事によって異次元の水深をキープし続けられるのだが、最大の問題点はタックルのハードさに対し、スモールマウスの口の小ささだった。スモールマウスは中層から猛スピードでシャッドにアタックする事が多く、フックの浅ガカリが多発する。
しかし、シャッドを7〜8mゾーンへ一気に送り込むには超高速海用ハイギアパワーリールの圧倒的巻き出し速度と伸びのないPEライン、そしてQ7の強力な遠投性と水圧に耐えるティップトルクが絶対に不可欠だった。巨大で最重量のレンジャーZ21べラードですら、そこからのドラッギングは驚異的水深潜行力を生むものだった。


バスボート最大最重量級のZ21べラードでは、109ポンドのエレキでも初速は遅い。
潜行水深は初速の水掴みで決まってしまう。
そこで海用の強力高速ギアを持つ3000HGを採用した。

しかし、その眞逆の欠点がショートバイトに対するPEラインのバラシの多さだった。直前練習でもキロクラスをボートべリでバラしていたが、あまり深く考えず、その対策を講じなかったのだが今回の敗因である。スモールマウスは通称「回転切り」と言う、ラージにはない「フック外し術」を使う。これは鱒類独特の行動で、水中で反転する時にグネグネと腹を見せるように体を回転し、自分の口の皮をネジ切ってしまうのだ。
この事を知って、最終日は阿部選手に捻じられてもバレないPEフックハンガーシステムと、念のために掛かりの鋭い細軸鱒用トリプルフックに急遽改造してもらい臨んだのだが、これがまた裏目に出た。もともとスモールマウスなど想定外のパワースピン、スーパースピンコブラと海用の3000HGのパワーは、ビッグスモールに掛かった瞬間、今度は全てボートべりの最後の急反転でフックを伸ばされてしまった。ドラグを最初からユルユルにすれば対処できただろうが、今度はドラッギング時、ルアーの水圧でラインが出ぱなっしになる。

2日目終了後、阿部ちゃんがわざわざ作ってくれたPEフックハンガーシステム。
これなら捻じられても回転ギレは防げる。
しかし、関西流武闘派タックルの強烈さにフック強度がついていけず裏目に・・・。

最終日決勝はそれでもビッグウエイトを狙い、最後までスーパークリームの可能性に徹しきったが、ハードベイトに拘るがあまり決勝唯一人のノーフィッシュ最下位となり順位を大幅に落としてしまった。今回の試合はハードルアーで通したこの結果に悔いはないなどとは言えるわけもない、これが未熟成のハードベイトシステムに拘りすぎた場合の最も情けない試合の結末であるである。付け焼き場で勝てるほど、TOP50の試合は甘くはない。ただ、このプラグを本気で3日間、この最終戦に投入し続けた経験は自分に色々な事を想い出させ、そして同時に新たな可能性のヒントを掴ませてくれた。

このプラグの構想は既に相当以前からあったのだが、あまりにも特殊で特異、一般的でないことから採算も合わない可能性が高く、アイスクリーム以来開発を見送っていた。しかし、先の旧吉野川の試合が私に思い出させてくれた事があった。それは「自分が試合で勝つために、自分の武器として、唯一無二の最強ルアーを作りたい」、その想いこそがイマカツ立ち上げの動機であり、所信だった事だ。売れるルアーではなく、試合で勝つためのルアー、それこそがイマカツ設立の動機だったのだ。

試合で勝つために、自分だけの唯一無二の武器を生みだすために始めたルアー工場。
来期からは迷わず「勝てる」ルアーの開発に再び全力を注ぐ。

癌に侵され、肉体の限界を感じ、苦しみ抜いたこの2年。肉体の消耗は気力と精神力を削ぎ落とし、結果の出ない試合はストレスだけを溜め続けていった。折しも外来生物法やリリ禁でトーナメント熱が下がり切ってきた時でもあり、トーナメントもライトリグ合戦、船団戦が常識となり、一般の釣りとの乖離が著しくなってきた頃でもあった。トーナメントルアー、専用ロッドを作っても売れない…業界の風潮、一部雑誌社の風潮は、あれほどこの業界を育ててきたトーナメントを急速に軽視し始めた。そんな風潮の中で、自分の心の中にも試合を辞めて、楽になりたいと言う気持ちの葛藤は常にあった。

野池のオカッパリで55アップ釣るのも最高に楽しいし、天狗にもなれる。
しかし、上位入賞を決める試合の1尾はたとえ30cmでもいまだに手が震えるほど感動する。

生活の基盤として起業した会社は既に安定期に入っており、生活への影響はトーナメントを辞めても特に激変はないだろう。しかし、それでも私が試合を辞めない理由、それはバストーナメントと言う舞台でしか味わえない強烈な刺激と驚きを、未だに毎回感じられる貴重な舞台だからだ。そして、その試合に勝つために仮説を立てルアーを作成し、いざバスに挑戦した時、それが「日本の最高難易度の状況」であるTOP50ステージで「圧倒的結果」と言う形で答えが出せたなら、それは何物にも代えがたい感動であり、爆発的な喜びと楽しさとなる。その鳥肌が立ち、心臓がキーンとなるような熱い感動を何度も体験してしまうと、どんなに体が辛くて気持ちが荒んでも、その辛さを一瞬で忘れさせてくれる未来へのパワーへと変わるのである。
だから、現役にこだわる事、トーナメントに勝つ事、それは私にとって「夢」ではなく、常に実現すべき「目標」の一つなのである。その長きに亘る積み重ねが「求道」の歩みなのだ。

年齢差20年近い選手が中心になってきた現在のTOP50。
しかし、私は試合に出る限りは最後まで強く、記憶に残る選手でいたい。

今回のTOP50最終戦、小森プロがTOP50チャンピオンのタイトルを獲得した。その時、表彰台で涙で言葉に詰まり、嗚咽を必死でこらえている彼の姿をみて、改めて人生を賭けた真剣勝負の場が、まだ厳然とここに存在する事を実感した。35歳を超えた大人が人前で、あれほど感極まって泣ける場所などそうはない。皆、人生を賭けてこの舞台で頑張っている者たちなのだ。様々な要因からトーナメント人気、JB人気はここ数年、一部売り上げ至上主義のメディアでの扱いは最低限レベルになるほど低下していた。しかし、今年、ギャラリーの増加に伴い、明らかにトーナメント熱は急速に復活の気配を見せている。TOP50は本気で釣りに人生を賭けた若者の勝負の場であり、そして同時にメーカーの意地とプライドを賭けた開発競争の最前線なのだ。

一時は激減していたTOP50の観客数も、最近は明らかに復活してきている。
今回決勝はほぼ30人すべて2人乗船になった。
何が飛び出すか、プロの人気以上に観客はリアルな釣技の登場に期待しているのかもしれない。

戦線復帰から2年、結果的にまたあと一歩で目標を達成する事は出来なかった。戦線離脱前の成績からするとこの2年の年間順位は悔しさだけが残る不満極まりないものだ。原因の大きな理由の一つはライトリグが満足にできていない事。そして2年連続、本来、最も優勝率の高い大得意な春(低気温時)の開幕2試合を連続で予選落ちしてしまっている事。全ての原因ははっきりと理解している。

しかし、この悔しさを感じる限り、絶対にせめて手術以前の身体に戻すまでトーナメントを諦める気はさらさらない。昨年は40%、今年後半は50%近くまで体力が術前の状態に回復してきた実感がある。確かにこの2年戦い続けている身中の敵は超強敵だが、既に私の来シーズンは今日から始まっている。そしてその前哨戦は昨日発表された11月7日〜8日の九州遠賀川2009年エリート5。もし選ばれるなら、昨年2位のリベンジ、そして最終戦のこの悔しさを思いっきりぶつける今季最高のバスフィッシングを魅せたいと思うので、2000円のDVD、NBCチャプターブックは高いですが…何卒、最後の選出投票(23日締め切り?)をお願いします。
(必ずしも予想通りの選出とならないのがE5投票レースの恐さですので…)


釣りビジョン主催2009年エリート5は
11月7、8日九州遠賀川に決定の発表が
今回の会場でされた。今年は土日、
しかも一般公開収録での開催となった。
はたして今年は誰が5名選ばれるのだろうか。

大好きな九州、そして遠賀川。
全エリアが見学可能なスペシャルステージのためTOP50でも最も盛り上がるフィールド。
一蘭も是非、食べたいので、何卒、23日締切の
選出投票よろしくお願いします。

 

 

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