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保存版カレイド用途別超詳細解説「H.WINDER Q-PLUS」の巻
世界初の4軸グラス、UD・SUPER QUATTRO-Xとは何か?
今回はグラス素材の深いお話です。



さて、本流ベーシックモデルとは別に、カレイドでは09年2機種のサイドラインをラインナップしている。サイドラインと言うのは、ベーシックモデルのように常に必要とするものではないが、必要な人には本流以上に必要な場合があるモデルである。それは来季から予定されている前衛的特殊モデルとはまた別で、フィールドのローカル性に応じたあくまで汎用性の高い、好みによっては常時スタメン化出来るシリーズである。

絶対に必要ではないが、これしかダメって時もある。それがグラスの特性。

ハスキーワインダーQUATTRO PLUS 73M
このモデルのベースとなるハスキーワインダーは、既に07年のカタログにも既に掲載されている通り、ユニディレクション(UD・単一方向性)グラスとしては既に完成域にあった。私がグラスロッドで一番こだわった部分は、UDと呼ばれる単一縦方向繊維を使用したグラスである。ご存じの通り、UDグラスは、いわば竿の理想と言われる 「竹(BAMBOO)」と同じようなもので、繊維の方向がバット→ティップまで同一方向に並んだ繊維からなる。故に非常に縦方向の伸びが素直で、竹のような柔軟性と伸び、そして腰のある戻りシロを持つ。私の選択肢の中でUDである事は、絶対に外せないグラスロッドの基本なのである。だが、このUDグラスは決して新素材でも何でもないのだ。実は昔からある海外の古いグラスロッドやトップウォーターのロッドには、このUD素材が普通に使われているのだ。

ユニディレクションの弱点は横方向への潰れ。竹の折れ方と同じ事である。
UD仕様の薄肉はトルクもなく超危険、しかし脂肪を付け過ぎると昔の竿になってしまう・・・。

では何故、そのUDグラスが現代のグラスロッドに使用されなくなったのだろうか?。その理由は簡単だ。単一方向性繊維UDの最大の弱点、すなわちブランク横方向からの「潰れ」に極端に弱いからなのだ。簡単に言えば、よく曲がるグラスロッドは、その曲がりの中心部でチューブラーブランクは極端に「楕円」に変形しようとする。横方向の補強を持たないUDグラスは、あっという間にヘシャげて潰れて(折れて)しまう事になる。これを防ぐために大昔のグラスロッドは異様にレジン、すなわち繊維と繊維をくっつけるための接着剤を大量に「ツナギ」として使っているのだ。これでは筋繊維の上下にたっぷり脂肪がのっているようなもので、重くて愚鈍なロッドになるのは当然なのである。
UDグラスを使ったクロスファイアー製法のハスキーワインダーは、確かに素晴らしかった。しかし、7フィート3インチのその重さは、とても現代の「低脂肪(低レジン)高タンパク(筋肉質)」路線から遠く離れた存在だったのである。確かに近年主流の低レジン製法は、カーボン素材を軽く高性能に変えてきた。しかし、それは同時に現代人的「ひ弱さ」にも繋がって行ったのである。

中空構造である限り、曲がれば曲がるほどブランクの断面は楕円に変形しようとする。
この潰れに対する強度の向上と、UDの性格は相反するため、昔は分厚い皮下脂肪が必要だった。

既にここまで解説すれば、前回の図解にもあったようにカレイドスーパー4軸が、このUDグラスの最大の泣き所を、最小限の補強で最も効果的に解決する理想的素材である事はすぐに理解できると思う。脂肪(レジン接着剤)のかわりに、縦横方向にはUD同様、弾性を落とした伸びのある筋繊維を補助配置、屈曲方向には高弾性繊維を45度角で双方向から配置し、最も負荷のかかるバット〜ベリーの潰れと捻じれを重量を増すことなく排除した。そしてH・ワインダーは、4軸で全てを補強してしまうのではなく、断面が潰れにくい細身になるギリギリの部分、すなわちUDグラスの命とも言える伸びシロを必要とする「ティップ〜ベリー」にかけては、その特性をいかんなく発揮させるため、4軸補強を潔く外している。その分、ベリーの強度を維持する接着効果を高めるため、このH・ワインダーQ+だけが、「Wコーティング塗装仕上げ」になっている。塗装を最低限にし、セミアンサンド処理した他のカレイドとの明確な違いがここにあるのだ。UDに対する私のちょっとしたコダワリである。そしてここに竹の鞭とも呼べるUD・QUATTRO-PLUSが5年越しで完成した。

極めて簡単にイメージするとUDクワトロはこう言った感じになる。
従来脂肪(繊維を接着する樹脂)だった部分を、異弾性筋繊維で伸縮方向に合わせて補強。

7フィート3インチでありながら片手でも扱える究極の軽量性を持ち、UD特有の伸びを持つベリーとスーパー4軸ならではの胴の強さは、無理をすればIK-50から、上限はIK-500R2までをもカバーする驚異的ウエイト適応力を持つ。吸い込みシロを残した適度なハリは操作感を犠牲にせず、ウィードエリアでのピラーニャ60/70、カバー際でのZINX3/8〜1/2oz、バズベイトも悠々とカバーする。特に足の速いスモールマウスの表層〜中層高速スピナーベイティングには最適である。個人的にはIK-180、250、400R、450LR、500R2でのハードボトムフラットのクランキングにもっとも多用している。特に180、250ではアクションの増幅が大きく、ロックパイルへのカミ込み回避、その後のライジングにも最高の相性を見せる。

バカラックの60アップをIK−500R2&ハスキーワインダーでキャッチする渡辺。水面下はブッシュだらけ。トルク負けすることは一切なかった。

このロッドは、どんな湖でも絶対に必要なロッドかと言えばそうではない。事実、関西圏での通常取材で出番は少ない。しかし、いざ遠賀川や霞ヶ浦、北浦、利根川、八郎潟といったマッディフラットなフィールドに直面した時、延々と続くリップラップや長大なテトラエリアに直面した時、その存在の偉大さは何物にも代えがたいものとなる。このロッドはグラスロッドの奥の深さを、スーパー4軸UDならではの世界観を、同時に楽しめる貴重な存在だと思っている。

バスフィッシングを深く知れば知るほど、一度は体験してみたくなるのがグラスロッドの世界。
一般的には知らなくてもなんら問題はないが、知ってしまうと奥が深いのもこの世界の特徴だ。

完成予定は来期だが、現在、新トルクマスターとして、10g前後の小型クランク専用ショートグラスを霞ヶ浦中心にテスト中である。

次回は最終回、カレイド・インパラの解説です。

 

 

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