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求道者


「追いかけるものは前の闇だけを見ればよいが、追われるものは後ろの闇も気にしなければならない。」

「頂」に登ろうとする者は前を見続けることでその気持ちを高ぶらせればよい。しかし、頂に辿り着き、初めて後ろを振り返った時、背後に口を開ける絶壁の闇に恐怖する瞬間がある。その頂にはもとより、一度に一人しか辿り着くことは出来ない。頂に登るために、後押ししてくれた友人も、仲間も、そこに共に上がることは許されない。その頂に立つことは同時に孤独との戦いの始まりだ。そこは華やかに見えるが常に妬み、嫉妬、中傷の凶風が絶え間なく吹きすさぶ。ひとたびそこに立てば、教えも助けも請わず、毅然と、ただひたすら黙して耐えなければならない。それが頂に立った者の宿命だ。

それでも尚、そこに立ち続けたいと望むなら、その断崖絶壁から幾度落ちようとも屈しない、心の強さと信念を持たなければならない。落ちても転んでも、負けを認めない自分が何処かにいる限り、それは本当の敗北ではない。もとより自然を相手に、その頂に永住できるような人間など本来いない。ゆえに頂を登りきり、達成者として一線を退くことも一つの美学。しかし、敢えて辛酸を舐めてでも 新たな登山道を求め続ける心の強さこそが、自分が生涯目指す「求道者」としての「強さ」だ。

「相羽純一」。数少ない私が認める本物の実力者だった。何度も本気でマッチアップした者だけが解る、その努力に裏付けられた強さは今も本物だったと信じたい。
何が彼をそうさせたのか、彼の試合での一面しか知らない私には、本当の動機、彼の心に巣くっていた闇の部分は解らない。ただ、彼が犯した違反行為は、出来心で済まされるほど単純なものではない。厳罰に関し同情の余地はない。

相羽純一よ、今日まで24年間、このトーナメントが「プライド」を賭けた真剣勝負の場であると誰よりも信じて疑わず、そこに全身全霊を賭けボロボロの体になってなお、まだお前達と戦いたいと心から思う俺の気持ちはお前には理解できなかったのか。11日間不休で、麻酔を打ち続けてまで練習し、それでなお予選落ちしても俺はそれを恥ずかしい事とは思わない。5キロ、6キロが続出する中、あの沢村選手が2日間1尾のバスすら釣れない、それが自然を相手にした競技の本質なのだ。共に悔いは残るが選択した結果に恥じる事はない。

もしもお前にまだ求道者としての資質が少しでもあるならば、自らの言葉を持って「事実」を「ありのまま」、包み隠さず自分の言葉で説明し謝罪すべきだろう。それがお前を今日まで支え応援してきてくれた多くのファンへそして、選手、スポンサー、協会への最後の責任だ。

俺が予選落ちした2日目、お前に「後は頼む」と言ったことを覚えているか。2年前、癌で戦線離脱した時の俺の言葉を覚えているか。

来週、再手術を受ける決心をした。俺は必ずいつか完全に復活する。5年、10年かかっても、生きている限りバス釣り求道者としてこれだけは諦めはしない。闇に喰われるな、アイバーソン。本物か偽物か、それを証明できるのはもはや自分自身でしかないのだから。



思い返せば、自分は勝つことも多かったが、現実その何倍もの悔しい負けを経験してきた。
事実、ここ数年、負けっぱなしだ・・・。しかし、結果は確かに重要だ。プロである限りそれは決して否定できない。だが、折れない気持ちと情熱は、時として結果に準ずる輝きを放つこともあると思うようになった。そしてその「頂」自体が登ったと思ったら実は八合目だった・・・それがエンドレスに続いていく。それがバス釣り求道者の終わりのない旅。

 

 

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