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K.imae Today's Tips 152 『ルアーニュースクラブディレクターズカット・ギルロイドの真実編』
さて、今回は今冬のメキシコでのルアーテスト釣行の折、オマケで作っていた「ギルロイド」が、当初の企画から一転、思わぬ主戦力となった経緯を紹介しておきたい。






このギルロイド、本当は正規品として開発する予定はなく、実はまだ実態が明らかになっていない次世代エルサルトと噂されていた?メキシコの無名湖「ピカチョス」の日本最速冒険?取材、そして同時に様々なルアーの実釣テストを雑誌収録する企画のオマケルアーとして開発したものだった。本来はそのメキシコ爆釣DVDに「オマケ」として付く販売予定のない「限定付録ルアー」として企画したのがギルロイドだったのである。






ところが…一見、バスロイドでいいバスが釣れている様に見えるがMAXでも50cmそこそこ、ぶっちゃけ取材はDVDはおろか、誌面記事すら近所の野池バスにすら激負けの史上最悪級の?救いようのない激ホゲスーパー赤字取材になった。初海外、そしてこの未知のドリームレイク日本初の公式取材&ロクマル激釣の初DVD出版で一気に世界的?人気アングラーになるはず?だったホサキングは、そのモッテなさを遺憾なく発揮し、ウン百万の大赤字と共にホゲキングの称号をまさに絶対的な地位として確立することになった。






まあ、バスロイドを10mのディープで使うという超荒技(湖北の漁礁攻めに面白いので近日動画公開予定)を編み出し、偶然居合わせたバスプロの大御所、ジミーヒューストンに驚愕されるほどの釣果(といってもショボイことには変わり無し)だったが、結局、この遠征企画は大きな記事にもDVD化も敢え無くボツとなり、すべてが「無かった事」に処理されて忘れられることになった。莫大な経費の浪費と後悔の念と共に…。
その後、イマカツ内でのホサキ株は暴落、同期の救世主・三原株が急騰しなければ今頃、広島(ほとんど島根)の田舎で農園経営でもしていただろうと思われる。結論的にはエルサルトが不調なメキシコ人ロッジのテキトーなガセ情報にまんまと乗せられた自分が馬鹿だったわけであるが…今から思えばピカチューみたいな名前も怪しさ満点なのだが…。






でまあ、そんなこんなで行き場を失ったギルロイドをどうするかで頭を悩ませたのだが、この当時のギルロイドの他にないコンセプトは、強風や逆風でも真っ直ぐカッ飛ぶ、スライスしないキャスト性能を特化した写真のエアロボディー構造だった。これは7年ほど前、自分が行ったスウェーデンのビッグパイク釣行でEGのエスフラットを強風の葦原エッジに平行に真っ直ぐ投げるのに四苦八苦した経験からである。体高があるフラットでジョイントのギル型はとにかく風にアゲンストだと遠投力と岩盤やオバハンスレスレに平行に投げることが難しかったのである。その点においてギルロイドはメキシコの立ち木の嵐を縫うように正確に投げられるという点で、数ある既存のギル型ビッグベイトにはない個性を持つには持っていた。ただ、それだけで既に何種類も市場に氾濫するギル型ルアーに圧倒的なさが付く能力ではなかった。






メキシコロケの大コケ以来、自分も日本で色々な状況で試してみたが、ギル型ビッグベイトは明らかに「スポーンに絡んだバス」には圧倒的な効果を発揮する事は確かだと感じた。移動距離が短く、大きく反転ダートしてギュッ!!と急停止できる能力は、バスのテリトリー内で威嚇行動を起こさせる能力はピカイチだった。ただ、それが近距離でのサイト~半サイトでの使用にかなり限定されること、そして何より投げて巻く作業ではS字のスライドが大きすぎてわざとらしく、同時に水を「掻き回す」動きではなく、水から「滑って逃げる」スライド的な動きのため、バスの側線刺激能力、即ち巻きの集魚パワーは弱いという印象をぬぐうことは出来なかった。






巻くこと、遠投して「線」で狙うだけなら「リップ付き」のギル型の方が優秀だと感じた。ただコチラはダートが期待できずサイトやピンでのリアクションには向かない。奥村君のブルシューターがリップ付き、リップレスタイプを共有している工夫は流石である。
ここでただ同じようなフラットテールを持つギル型ルアーを出した所で、逆風での遠投性能だけでは大したウリにもならないし、何より自分で唯一無二と思って使えない以上、試合の武器にもならないと思っていた。このレベルではコピーもの、せいぜい「付録ルアー」レベルなのである。






ただ、確かにギル型ルアーへのデカバスの反応が違う事は解っている。では理想は何なのかと考えたとき、それはこのギル型で「点」と「線」を両立できないかと言う難題だった。
かつてハドルストン8が大流行したとき、チェイスさせる集魚能力はずば抜けているハドルストン8インチがダートしてくれればと、ハドルテールに強いジレンマを感じていた。喰うキッカケ(ヒラウチやダート)がハドルストンは作れなかったからだ。これが実現すればビッグベイトの新たな釣り方が生まれる…。
その考えを今まで形にしてこなかったわけではない。実は今回のブーツテール型スイムベイトはもう4年前からプロトは存在した。ただ、それはあくまでハドルテールの真似にならない形、デザインでパクリと言われないための「逃げ」が目的であり、性能的には完璧なハドルに及ぶものではなく製品化を見送ったものだ。当然、ダートする性能もなかった。故にそれ以上付き詰める事はなく長年、放置されていたのだ。それから4年後のある日、たまたまギルロイドにこのテールを間違って逆さまにつけてしまうまでは…。






以前はこのブーツテール、水を受ける側を下に、フィンを上に設計していた。ところが、コレをギルロイドに逆さまに付けると、巻きではハドルストンにウネリを加えた様な実に色っぽい動きを発生し、同時に程よいダート性能が出現してしまった。不思議なことにこれをそのままアンドロイドやバスロイドに付けても全然ダメで、ギルロイドに逆さまに付けた時のみ、その動きは出現した。恐らくギルロイドの体高の高さと腹のラインが、水を受ける面と水が抜ける面に偶然上手く形状マッチしたようである。
この偶然からブーツテールの研究開発が一気に再開し、ボディーの腹の形状に合わせた実に絶妙な水のウケと逃がしの配分バランスがあることを掴んだ。その配分と配置さえ間違わなければ、バスロイドでも「巻き」と「ダート」の両立が再現は可能だということもわかった。






その動きとアクションは魅力的だった。実釣テストでも巻くだけでバスを手にすることが出来た。しかし、果たしてコレでいいのか一般商品として発売に踏み切るにはまだ何か確信がなかった。釣れ方が理想的ではなかったのだ。釣れたのはハドルストンのようにスローに巻いていたときで、ダートとのあわせ技で食わせたものではなかった。ギルロイドBTならではの能力で釣る釣り方が自分にはまだ確立できていなかった。半ば諦めかけて桧原湖のプリプラで自分が持っていたギルロイドの全てを三原に貸したその日まで。






そこで三原はこのギルロイドを自分の想像を超えた「高速巻き」、通称「三原巻き」で使った。そして超が付くほど難易度の高い無傷の檜原ラージ53cmを仕留めてきた。「無警戒の泳ぎ、そしてリップに負けない柔らかく強い撹拌波動、そこからのパニックダート、この3要素を1度に表現できるブーツテールは今までになかった最高のビッグベイトです!」自信をもってそう語る三原の秘められた才能に初めてこの時、気が付いた。
そして翌日、見よう見真似で速巻きを自分でも試してみた。誰もが知る大きなレイダウンに沿って大遠投し、想像以上の超速巻きをしたところ、巨大な55cmクラスのラージがまさに魚雷のような猛スピードでチェイスしてきた。そのバスがルアーに最接近したタイミングでキルを入れたところ、モンドリ打つように激しいバイト。しかし、勢い余って最初のジャンプで外れてしまった。(2週間後、全く同じ場所で試合本戦で再会することになるが。)
だが、この時、ギルロイドBTに対する不安は確信に変わった。そして桧原湖から帰阪後、改良を加えたギルロイドの東条湖実釣取材で彼の釣りを初めて目の当たりにし、ギルロイドが唯一無二のギル型最終形態になった事を確信した。






三原の速巻きのポイントは巻き始めにギルロイドの姿勢をまず真っ直ぐに整え、I字自然体モーションから急激に加速させてS字逃走モーションに移行、そして、突発的なキルを加えることで捻りの入ったスライドを1キャストに何度か組み入れるものである。
最初にルアーとラインを一直線に整えてから一気に加速させることで、自然体のギル(I字)が急激に「逃げる」動き(S字)に切り替わり、その後の急停止でのヒラを打つ様なダートでバスの本能のスイッチを入れる高度な複合速巻きである。この一連の動きは三原の動画で詳しく解説されているが、「ギルロイドの動き出し」に注目して見て欲しい。I字スタートを切るための「整える」とはこういうことなのである。





DVD付録のオマケ企画のボツから始まったギルロイド。それは今、若い力を借りて唯一無二のギル型ビッグベイトへと昇華したと確信している。

 

 

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